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第4話 初クリスマス

 バイトを終えた、俺は表で待ってる和樹に近づいていった。色んな事バレバレな顔してるから、和樹は苦笑いしながら俺の鼻のてっぺんを突いた。 「泣くなよ」 「ごめん、俺どうしようもないバカで。和樹の事、疑って…」 「分かってるよ。亮二は小さい頃からそういう事あるだろ?」  それを言われるとどうしようもない。俺は恥ずかしいばっかりだ。確かに昔から、俺は勘違いとか早とちりなんてのが得意でした。  でも、和樹も苦笑いのまま俺の頭を撫でている。なんか、申し訳なさそうだ。 「俺も、隠してごめん」 「和樹?」 「後ろめたい事があるわけじゃ無かったんだけど、隠しちゃって。疑われても仕方がないって思ったんだ。怒らせちゃって、でも昔みたいに仲直りの方法が分からなかった」  人前でそっと手を握られて、ちょっとドキ。見上げた先で、和樹は泣きそうな笑い顔だった。 「ごめん、亮二」 「俺だって悪いんだから、もう謝らないでよ」 「俺と、クリスマスしてくれる?」 「当たり前だろ。俺、楽しみにしてたんだから」  だから喧嘩した時、苦しかった。一気に明かりが消えたみたいで、苦しくて切なくて泣いていた。もう和樹と今まで通りじゃないんだって思ったとき、俺は色んなものが壊れていくように思った。  完全依存だよ、こんなの。俺、どんだけ和樹が好きなんだよ。 「じゃあ、ケーキ買って帰ろう。準備してあるんだ」 「あっ、うん。あっ、でもその前に自分家寄って着替えたりしたい」 「いいよ」  嬉しそうに笑う和樹に、俺も幸せに笑っていた。  和樹の家は誰もいなかった。でも、テーブルには二人分の素敵なディナーが用意されている。和樹のお袋さん特製のビーフシチューとパン、真ん中にケーキ。そしてシャンパングラスだ。  そのグラスに、和樹はほんの少し金色かかった飲み物を注ぐ。俺は少し期待していた。 「なぁ、これってさ!」 「シャンメリーだよ」 「ですよね」  本物のわけないっすよね。 「でも、こうしてちゃんとしたグラスで飲むと雰囲気はそれっぽいでしょ?」 「うん」  ランチョンマットの上に丁寧にセッティングされた夕食は、一つも二つも高級に見える、特別な夜のご馳走だった。  「メリークリスマス」に乾杯を切っ掛けに、ご飯を二人で食べる。和樹のお袋さんは料理が上手で、このビーフシチューも絶品だ。 「なんか、お袋さんにも悪い事しちゃったな。わざわざ用意してくれたんだろ?」 「亮二と一緒にクリスマスするって言ったら、張り切ってたよ」 「和樹のお袋って、可愛い所あるよな」  ほんわか日だまりなお袋さんなのです。 「そうでもないさ。何かと口うるさいしな。ちゃんとご飯食べなきゃとか、偏った食事はいけませんとか」 「ちなみにさ、今日はなんの予定だった?」 「適当にチキン買って、ピザとケーキ」 「それもいいけど、やっぱ家庭料理が最高な」  全部好きな物だし学生クリスマスっぽいけれど、俺はこのシチューがとても温かくて最高に感じた。  ご飯を食べて、ケーキは部屋で食べる事にした。ホールのまま好きに食べられるって最高だよ。  そんなこんなで和樹の部屋に引きこもると、俺はモジモジしてしまう。持ってきたプレゼントを渡すタイミングを逃している気がする。 「亮二?」 「あっ、あのさ」  あーもう、まったく! こんなの俺っぽくないじゃん。何色気出してロマンチックとか目指してるんだよ。泣き顔鼻水見られた時点でロマンチックが裸足で逃げるっつーの!  俺は鞄に隠していたプレゼントを出した。もう渡せないと思ってたから、ちょっぴり嬉しい。喜んでもらえるとなお嬉しい。 「俺に?」 「他にいるかよ」  驚いたみたいに俺とプレゼントを見ている和樹は、次にとっても嬉しそうに笑う。そしてそっと、包みを受け取った。 「もしかして、突然バイト始めたのって…」 「そういうの探るなよ」 「ははっ、ごめん。でも、嬉しすぎて。俺の為に、バイトまでしてくれるなんて。てっきりゲーム買ってお金無くて自分にリボンつけて『プレゼントは俺』なんて、定番のやつやるのかなって」 「その手があった!!」  ド定番な古くさいけど、和樹ならもらってくれるはず! なーんだ、それはそれで良かったじゃん。  …でも、一生懸命仕事したのは、いい経験だった気がする。 「開けてもいい?」 「どうぞ」  簡易包装の袋を開けて中を取りだした和樹は、驚いた顔をして俺を見ている。  俺が選んだのは、青と白のストライプのマフラー。和樹、いつもマフラーしてなかったから。それに、深みのある青が似合うだろうなって思ったんだ。  マフラーを持ったまま俺を見ている和樹に、少し不安になる。もしかして、気に入らなかったのかなって思う。あっ、もしかしてニットで首とかチクチクしちゃう人! でも、和樹普通にニット着てるし…。 「あの、嬉しくなかった?」 「あぁ、違う! 嬉しいよ。ただ、偶然ってあるものだなって」 「え?」  なんの話でございましょう?  和樹は少し恥ずかしそうに、クローゼットの中からプレゼントを出してくる。知っている、簡易包装に驚いた。  受け取って、そっと中身を出して俺は「あ!」と声を出した。  出てきたのは俺が送ったマフラーの色違い。綺麗な赤と白のストライプだ。 「実は、秋川にも選ぶの手伝ってもらったんだ。誰かにプレゼントなんて、あまりした事がないし。でも、これを見たら亮二の事を思いだして、似合うだろうなって」 「ははっ」  これって俺達、相思相愛って奴で間違いないよね? ちょっと恥ずかしいけど、めっちゃ幸せ。 「和樹、大好き!」  笑って、和樹の胸に飛び込む。そして、濃厚なキスをした。頭の芯が痺れるような奴ね。 「亮二」 「んぅ、もっと…」 「先にケーキ食べよう。せっかく美味しそうなの選んだんだから」  うっ、それは勿論美味しいですよ。俺は名残惜しいけど和樹から離れた。和樹には美味しく頂かれたいけれど、ケーキは美味しく頂きたい。  隣り合って、ふざけて二人でケーキ入刀。どんだけアホかと思うけれど、ちょっとドキドキしたのも本当。  一切れずつに切り分けて、二人で美味しく食べる。あのケーキ屋さんのはクリームの甘さ控え目で、苺の酸味がバッチリ。すっごく美味い。 「美味しいな」 「だろ?」  俺が得意になるもんじゃないけれど、なんかすっごく嬉しかった。  ケーキも食べて、俺は満足に笑う。和樹がそっと近づいてきて、俺を背中から抱きしめた。 「満足?」 「満足」 「じゃあ、違うほうも満足する?」  悪戯っぽく誘われて、尻尾振ってホイホイする俺は淫乱です。寂しかった分、沢山甘えたい気持ちがある。  ふと、ケーキについていたリボンが目に入った。俺はそれを自分の首に巻いて、リボン結びにした。せっかくなので、ド定番行きまーす! 「プレゼント、もらってくれる?」  ウルウルを意識した上目遣い、これポイントな。子犬のようなつぶらな瞳って、わりと言われるんだよ。  和樹は驚いて、笑って、優しくキスをしてくれる。大丈夫、もらってくれるっぽい。 「素敵なプレゼント、有り難う」  囁いたその言葉が、色っぽく濡れておりました。

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