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幼なじみだから
書道部の紹介が終わってから、王子様スマイルで帰っていった先輩。
正直、その後の紹介は覚えていない。
俺の心は決まっていたから、聞いても意味なんてなかった。
終わった後に、入部届が順番に配られる。
俺はその場で、学年クラス名前を記入し、部活名の所に「書道部」と書き込んだ。
「やっぱりお前、書道部に入るのか」
晶は呆れた顔で入部届を覗く。
「当たり前だろっ!部活ある日は先輩に会えるし、毎日眼福パラダイスだぞ!やばいだろ!」
「はいはい」
「晶は?どこ入るの?」
「……まだ決めてない」
「じゃあさ!晶も書道部入ろうよ!!」
「書道部?んー……まぁ、そんなにめんどくなさそうだけど、とりあえず交流合宿の時の勧誘で決めようかと思ってる」
そういえば、交流合宿では部活勧誘もあるんだった。
って言うことは、先輩にも会える!?
「……っしゃ!!」
「急にガッツポーズすんな、ビビる」
全然ビビってなさそうに晶はつっこむ。
あれ?そういえば、交流合宿っていつだっけ??
「今週の土曜から日曜。月曜が代休」
「へーそうなんだ……って何で分かった!?」
晶が俺の心の声に答えたことに驚きながら聞くと、俺のほっぺをつねった。
「お前、顔に出過ぎ」
晶はあまり笑わないから、たまにニヤッと笑うとドキッとしてしまう。
俺って、やっぱりギャップに弱いのかもしれない。
――――――
俺の幼なじみである九重 丞は、アイドルオタクだ。
金水 翼というアイドルに夢中で、よく丞の家でDVDやら何やら見させられている。
全く興味が無いが、あの純粋な羨望の眼差しを見ていると本当にこのアイドルが好きなんだなと思ってしまう。
アイドル好きなことは、他の友達には言っていないらしく、俺しか知らないらしい。
というのも、昔、その事でからかわれたことがあって、丞が珍しくしょげてたことがあった。
小学六年生の時だ。
『あきら……男がアイドル好きなのってダメなのかなぁ……?』
『男が男のアイドルを好きになるのは、別にダメじゃない。……少ないとは思うけど』
子どもはマイノリティを嫌う。
いや、マイノリティであることを嫌う。一緒にされたくなくて、自分の近くに寄せ付けまいと排除しようとする。
『好きなものを好きって言うのはダメ?』
『ダメじゃない。でも、きっと丞みたいにそのアイドルを好きになる人が今はまだ少ないんだ。だから、今は分かってもらえないと思うけど、もう少し大人になって色んな人と出会うようになったら、分かってくれる友達を作ればいい』
『そっかぁ……!あきらって、すごく賢いね。すごいや!』
あのキラキラとした羨望の眼差しは、好きなアイドルを見る時のそれと似ていて、心がムズムズしたのを覚えている。
丞は一人ぼっちだった俺に居場所をくれた。
だから、丞を一人ぼっちにはさせない。
丞が肩を故障して、水泳を諦めた時も、俺も一緒に水泳を辞めた。
丞がいたから続けてただけで、丞がいない水泳部にいる意味はなかった。
好きなアイドルの話も、水泳の話も、学校の話も……丞が話すから、聞いてる。
丞が隣にいるから、俺はここにいることができるんだ。
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