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第19話
「——あぁ、またイっちゃったな」
「は、ひぅ……ぃ、いおり、さ」
ベッドの上に座ってる伊織さんに背後からぎゅっと抱きしめられ、前を両手で弄ばれ始めてからもうどのくらい経っただろう。抵抗しようにも俺の両手首はネクタイできっちり縛られていて、できることといえば自分のシャツの胸元を握り締めるくらいだ。
衣類を全部脱がされた下半身はぐちゃぐちゃとはしたない水音を立てていて、自分の状況を嫌でも思い知らされる。
「むり、も、もぉ出な……あっ、」
息も絶え絶えにそう言った俺の頬に口づけを1つ落として、伊織さんはモノを扱いていた指で後孔に触れた。途端にびくりと跳ね上がる体は易々と押さえつけられてしまうから、与えられる過ぎた快感を黙って受け入れるしかない。
「こっちは喜んでるみたいだけど」
「だめ、だめぇ……!あぁあ、んっ、んぅ、」
固く閉ざしたそこを揉むように押しつぶされて、必死に足を閉じようとする。けれど逆に太ももで挟んだ伊織さんの腕を変に意識してしまって、その指先が奥に入ってくる感触に思わず喉が反った。
いつもよりも乱暴でしつこい愛撫にはちょっとの痛みも辛さも混じってるのに、いつも以上に感じてしまっている自分に戸惑う。その間に指は2本に増え、ばらばらな動きでナカを苛めた。
びくびくと痙攣する爪先が持ち上がり、俺は背後の伊織さんに縋り付いた。もっとも手は使えないから頭を首筋に寄せ涙で酷いことになっている顔を隠すのが精一杯だったけれど。
これは、だめだ。
なんにも考えらんなくなる。
せめて声だけでも、と唇を噛み締めた瞬間、こどもに言い聞かせるみたいな優しい口調で伊織さんが俺を叱った。
「こら。傷つくからだーめ」
「ん、でも、こえ」
「隠さない隠さない。——全部聞かせて、柊」
言葉とは裏腹に容赦のない指が、ナカの"いいところ"を探り当てる。そこを押し上げられるのと同時に首を柔く食まれれば、途端に背中が仰け反った。理性とか羞恥心とかが全部吹き飛んで何も考えられなくなる。
「うぁ、あ、あ"ぁぁあ!あっ、あー!」
「……好きだよ、愛してる」
「あぅ、んゃあ、あ!や、やだ、もぉ……!」
「やめていーの?ココ、もうだいぶ苦しそうだけど」
「——っ!やぁあ、あ、あ……」
指が引き抜かれるだけで、またイって。喘ぎ過ぎたせいか酸欠になった視界がちかちかと揺れる。俺はもうおかしくなってしまったのかもしれない。だってなんにもされていない筈のナカが、勝手に疼いている。苦しいのに。しんどいのに。でも、欲しいなんて思ってしまう。もっと、もっと欲しい。頭がまっしろになるようなあの、感覚が。
足りない。
「い、おりさん。いおりさん、いおりさんっ」
「どうして欲しい?柊。ちゃんと、お前の口から聞かせて」
「んっ……わかってる、くせにっ!いじわる、だ……いおりさんのばかぁ……!」
「はいはい。それで?」
本当はわかってる。
あの時どうしてあんなに腹が立ったのか。
どうしてこんなに、体の奥が物足りないのか。
いつも気づかないフリをしてきた欲望が、制限の吹っ飛んだ脳内を支配する。だから、欲しくて欲しくてたまらない。
この綺麗な人を、俺のところに縛り付けておきたいと、思ってしまう。
「ちょうだい。おねがい、いおりさん。いおりさんが、ほしい……!」
「……ん。いーよ、あげる。全部」
俺は無我夢中で伊織さんにしがみつき、その鎖骨のあたりに吸い付いた。瞬間、指よりもずっとおっきくて熱いものがナカを貫く。焦らされて焦らされてやっと与えられた快感に俺の体はあっさり服従して、ろくにもがくこともできずされるがままに揺さぶられた。それすら嬉しいと、思ったりもして。
白濁が薄くなり声が枯れても、俺は一晩中伊織さんを欲しがり続けていた。
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