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第36話

目が覚めた。息が苦しい。 なんとか視線を下に向ければ、俺の首にしっかりあごを乗せていびきをかいているりぃがいた。 「りぃ、……りーりーい。重い」 ぽふぽふ背中を叩くと、ゆったりした様子でりぃは目を開けた。途端に振られる尻尾。ようやっと持ち上げられたあご髭には見事に寝癖が付いている。その姿に思わず笑みがこぼれた。 うん、大丈夫。 ちゃんと、心が動いてる。 「ね、りりぃ」 起きたらお腹減ったの、と言わんばかりに台所へ目をやるりぃの顔を両手で包んで、額を寄せる。柔らかい毛の感触と、ほんのり伝わる体温。一言だって喋らずに伊織さんをずっと支えてきた、この子の強さと、優しさ。 「俺にちょっとだけ力を貸して」 りぃは朗らかに、「あんっ」と鳴いた。

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