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第39話

これが最後の一曲。 嵐の『Oh_yeah』の次、酸欠気味でちょっとくらくらしてきた俺はそう決めて、斉藤和義さんの『歌うたいのバラッド』を弾き終えた。吹き込み口から唇を離し、大きく息を吐く。途中から夢中になり過ぎて他のことを考える余裕がなかったのだけれど大丈夫かな、なんて今更ながら不安が戻ってきて。顔を上げようとした、その前に。 ぎゅ、と抱きすくめられて、俺は尻餅をつく。 ここにいるのは2人だけ。つまりここは、伊織さんの腕の中だ。記憶にあるものより随分と線が細くなった体に気付いた瞬間、勝手に両目から涙が溢れでた。 ダメだ、止まらない。 「……ばか。伊織さんのばかぁ……!」 「なんで“待ってろ”っていってくれないんですか!そしたらおれは何十年だって、ずっとずっと大丈夫なのに……!」 「巻き添えとか、解放とか、わけわかんないことばっかゆって……たとえあんたが不知火伊織を見限ったっておれは!おれは、っあきらめてなんかやらないんだからぁ……!」 「いおりさんの臆病者っ……甲斐性無しぃ!う、ひっく、おれをこんなにしたのはいおりさんなんだからっ責任取ってくださいよぉ……!」 いつの間にか縋り付いていたのは俺の方で、伊織さんの襟元を握りしめて額を押し付ける。どこまでも優しく背を撫でてくれているその手は少しだけ震えていた。けれど、やっぱり、あったかい。いつもと同じ、大好きな伊織さんの手。 それがみっともなくぐすぐすと泣きじゃくる俺の頬を支えて、傾ける。涙に濡れた茜色は柔く細められていて、ぼんやり伊織さんの顔を見つめている俺の耳元に彼の横髪が触れた。 「________________」 その時確かに、この世界は俺たちの味方だった。

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