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「急にごめんね」
「ううん。大丈夫」
「万里とはうまくやれそう」
「元は友人だからね。大丈夫だよ」
「昨日万里が泣かせたって…」
「あぁ。まぁ色々あって。離れてた間のことがまぁね。でも大丈夫。心配しないで」
「千里くん…」
「ん?」
「あなたたち…恋人だったんでしょ?私のせいで別れたんじゃ…」
「あぁ…知ってたの?」
「何となく…」
「そっか。ん~…確かに付き合ってた。同棲してた。でもね、あの頃の俺は万里の想いに甘んじてぬるま湯に浸かっていただけだった。万里と同じ想いを結局持てなかったんだよね。このままじゃだめだなって思ってたタイミングでたまたま東雲の人たちと会う機会があって…それで決意したんだ。あの頃は本当に万里には申し訳なかった。万里に何も返せなかった…あの家はまだあのままにしてある…たまに掃除する程度しか戻ってないけどね。でも…誰かに売ったりなんて出来なかった…万里に申し訳なくてね。俺に…くれた大きな大きなプレゼントだったし」
「万里は今も…千里くんを愛してるわ」
「…そうかもしれないね。でも俺じゃダメだよ。わかるでしょ?東雲は大きな家だ。万里は一人っ子だし。東雲は後世にも残していかないとならないところだよ。俺にそれはできないから」
「…」
「仕事はちゃんとするから心配しないで。」
「千里くん!」
「ん?」
「…」
「え…」
そんなこと…でも…そんな…
「だから…考えて…ごめんね。千里くん。わがままで」
「あ…いや…」
今聞いた話を脳内で繰り返しながら白鳥さんと時間を過ごして…でもほとんど何を話したのかは覚えていない。
そのまま別れて帰路についた
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