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「千里くん、あなたはもう万里のことなんとも思ってない?今も?」
「何が言いたいの?」
隣で嬉しそうに歩く万里をそっと見詰めながら、あの日白鳥と話したことを思い出していた
「…奥さんとうまくいかなかったのは…万里のこと…」
「違うよ。仕事とプライベート両立できなかっただけ…」
「…ねぇ。別れたのが万里の子供が生めないからってことだったのなら…その心配はなくなるわ」
「え?」
「今ね、ある機関で薬が開発されているの。動物実験は成功したわ…もうすぐ人への実験が始まる」
「…」
「男でも…子供が生めるようになるかもしれないの…」
「…」
「それにね、万里はこの会社を継ぐつもりがない。後継はもう決まっているの。元は万里に継いで欲しかった。でもね、万里はとても頑なであなた以外の他で子供を作るなんて考えもしなかった。確かに多くの女性と関係を持ってきたわ。でも間違いがおきないようにいつも慎重だった」
「でも俺は万里とよりを戻す気は更々ない」
「そうよね。でも本当にそう?」
「…」
「あなたは万里と過ごしていたときが一番人間らしかった。今は…そうは見えないわ。そうでしょ?自分でも気付いてるんじゃないの?」
「…そんなの…」
「私は…貴方と万里が一緒になればいいのにと思ってる」
「…」
「久しぶり。千里くん」
「会長…どうしてここに…」
「すまなかった」
「え?」
「私は…万里のことをちゃんと考えてあげられなかった…千里くん…もし叶うならもう一度万里と…そしたら俺はもう…反対しないから…」
「私は…」
「そんな気を使わないで今はプライベートだ」
「…俺は…自分で決めたんです…万里と別れると。あの頃も今も…万里には友人以上の感情は持てない…だから…そんなこと言われたところでどうすることもできない…」
「そうか…俺は…また何か…間違えたのだろうか…人を見る目はあると…思っているのだが…あのときも…今も…君は万里のことを思っているように見えたから…すまなかった…余計なことをしてしまったようだ…白鳥くんわざわざ時間をくれたのに…すまなかった…私は帰るよ…」
「会長…」
「…すいません…」
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