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『ねぇ。千里くん』 「はい」 『万里を頼んだよ』 「何いってるんです?そんな…」 『千里くん。いつもありがとうね。』 「俺は…何も…」 『…千里くん。俺は…君が好きだよ』 「へ?」 『ふふ…変な声。君という人柄に惚れてるんだ。…俺が別れさせておいてなんだけど…やっぱり万里と共に生きるのは君がいい…なんて…こんな勝手なこと言ってごめんね。何か…弱気になっちゃってるかもね。 俺は…男手一つで万里を育ててきた。いつからかどう接していいかわからなくなって万里にはとても酷く当たってしまったと今ならわかるんだ。万里を立派に育てなくては…東雲を支える人間にしなければと…いつしか万里ではなく東雲を見ていた。結果万里を苦しめたし悲しませたし親の愛情を与えてあげることができなかった…だから万里には家庭を持ってもらって…子どもを持ってもらって…そうして万里が愛を知るのではないかと勝手に決めつけて万里の思いを真っ向から反対して…君と無理矢理引き離した…そうしたことで万里が逆に変な風になるなんて…思いもしなかったんだ…君を思う万里…その万里ともっと会話をすればよかった…万里の話を聞いてあげれば良かった…』 「万里には…もう俺の言葉は届かないかもしれません。会長…」 『…やだ…名前で呼んで?』 「…(がい)さん」 『うん』 「垓さん。俺は…万里をとても傷付けたんです。友人以上としては見れないと…何度も何度も万里のことを否定した。今なら…わかります。色々考えたんです…俺は万里のことを万里が俺を思うのと同じように…好きだってこと…垓さん…万里は受け入れてくれないかもしれない…でも…頑張ってもいいですか?」 『いいよ。俺もそれを望んでる…』 「ありがとうございます」 『親父!まだお話ししてるの?休んだら?』 医者と話すために病室を出ていた万里が戻ってきたようだ。 『うーん。そうする。千里くん。愛してるよ』 『ちょ!なんなの?』 「俺も愛してますよ。垓さん」 『せんちゃん?』 「万里。帰ってくる?」 『うん。戻る。付き添いはできないみたいだし。友里亜を送ったら帰るね』 「白鳥さんいるの?」 『うん。友里亜と打ち合わせ中に倒れたみたいでね』 『万里。私は大丈夫よ。迎えがくるから』 『那由多さん?』 『そう。もう来るから早く千里くんのとこに戻ってあげて』 『わかった…んじゃせんちゃん。これからそっちに向かうね』 「うん。待ってる。一緒にごはん食べよ。仕上げておくから」 電話を切り息を吐く。垓さんが応援してくれるなんて思わなかった…

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