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垓side
千里くんのことを初めて万里から聞いたときは本当に驚いた…
だって千里くんは俺がかつて愛した人の…
息子だったから…
だからこそ…俺は万里とのことを認めてやれなかった…
俺が愛した人は…千里くんの父親である史澗 くんだったから…
もし彼らを許してしまうなら…また史澗くんと会わなくてはならないことも増えてしまう…
そう…俺の保身のためだった…万里を思ってとか東雲を思ってとかそれはもちろん嘘は一つもない。ただ一番守りたかったのは…俺自身のこと…
そんな俺のことでも愛してくれた万里の母親は本当に素晴らしい女性だった…だから彼女がいなくなったとき本当に辛かったし苦しくて沢山泣いた…本来俺は万里と同じでとても泣き虫なのだ
その時も支えてくれたのは史澗くんだった。
妻を亡くしたもの同士だからきっと理解してくれていたのだろう。あの頃と変わらず優しく何も言わず側にいてくれたのだ
学生時代の先輩だった史澗くん…。東雲を背負ってきた俺を皆遠目で見てて俺には近づきもしなかった。
そんな中、史澗くんだけが俺を見てくれた…彼にとっては他の人と変わらない接し方なのかもしれないけど俺にとってはとてもとても大きなことで…
千里くんは彼に良く似ていた。容姿や、声質もそうだが醸し出す雰囲気がまるで同じだったんだ…
だからこそ認められなかった…きっと…史澗くんに良く似た彼と俺に良く似た万里の睦まじい姿に嫉妬したから…
「最低だな…俺は」
「何が?」
誰もいないはずの扉のところから急に聞こえた声に驚いて顔をあげる
「え?いつの間に…?」
そこにいたのは妻が亡くなった時振りに会う史澗くんだった。相変わらず優しい雰囲気そのままだけど色気たっぷりで綺麗な彼…どうして…ここに?…
「垓くん全く俺に気が付かないまま一人で百面相してて可愛かったよ」
「何でここに?」
「穣が那由多くんから連絡があったって教えてくれたよ」
穣は那由多くんの父親で史澗くんの友人であり俺の先輩でもある。
きっと目の前で倒れた俺をどうしようかと焦って友里亜くんが恋人である那由多くんに連絡したのだろう。その後病院に運ばれるまでのことは那由多くんが全てやってくれたと聞いていた。
本当に…何の因果なのか離れていたはずの史澗くんと穣くんがまた側に戻ってきたのだ。史澗くんも穣くんも随分と前に遠くにいってしまったはずだったのに…
子供たちは俺たちの関係を知らない。
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