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「ねぇ。千里くん」 「はい」 「君は恋人はいないの?」 「えぇ。いませんね。」 「もしかして…君もゲイかい?史澗さんもだし」 「いいえ。父も元は違いますよ。実際俺の産みの母親のこと愛していたし」 「…そう。ならよかった」 「え?」 これは日常の何でもないときに話したことだ 「キャロルがね。ゲイが嫌いなんだよ。気持ち悪いんだって。父に会ってもらって、史澗さんと夫夫だって伝えたとき散々だったんだ。もう二度と俺の両親には会いたくないって。俺はね愛し合ってるならそれが男同士だろうがいいって思ってるんだけどね。ほら。愛する人が嫌ならね?わかる?」 「…」 「だからね、君が俺の義理の弟って知ったとき君までそうじゃないかって気味悪がったんだよね。ゲイじゃなくてよかったよ」 「はは…」 泣きたい…俺はゲイではないけど同じ男である万里を愛しているのに 思ったよりも苦しくて… 「千里くん?どうしたんだい?」 「いえ。東雲さん」 「ん?」 「父や垓さんのこと反対ですか?」 「…ううん。そう言う訳じゃないって言ってるでしょ?父は尊敬する人だし史澗さんだって素晴らしい人ってことわかるよ。何?やっぱりゲイなの?君」 「…学生時代は女性と交際していましたし結婚していたこともあります。だから本当は違うんだと思います。…でも…愛した人は…たった一人…その人は男性でした」 「へぇ…そうなんだ?」 「気持ち悪いですか?思い続けるって」 「今もその人を愛しているのかい?」 「えぇ。でももう彼は新たな人と人生を歩もうとしている。だからその幸せを願うだけです。辛くないと言えば嘘になりますけど俺も散々その人を苦しめてきたのでその報いを受けるんだろうと思っています」 「そうか。君にそんなに愛される人…きっと素敵な人なんだろうね。」 「えぇ。本当に…素敵な人ですよ…」 「そうかい…」 それ以降そんな話は万里とはしていない

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