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万里side 今日は久しぶりにキャロルとのデートだ。最近は千里くんと過ごすのが楽しくて気が楽で彼と過ごすことの方が多かった。 千里くんとは同い年だし感覚も近くてこの頃には俺が唯一素を見せられる相手になっていた。俺だって休みのときぐらい気を抜いて過ごしたい。 キャロルにはいつも万里はしっかりしていて包容力もあってクールでそんなところが好きだと言われてた。 でも本当の俺はそうじゃない。抜けるところも多くあるしはしゃぎたいし…でも本当の姿はキャロルの求める俺ではない。 何度か話し方をいつも通りにしてみたり元気一杯振る舞ったりして素を見せたこともあったけどそのとき彼女は嫌そうに俯いて用事ができたとかで帰っていったんだ。それは一度や二度ではない… そんなの万里じゃない。具合悪いの?帰る。必ずそんなことを言われてた 始めは機嫌を損ねた彼女をフォローするのも頑張ったけど最近は一緒にいることに疲れてしまうことも多かった。だからこそキャロルと会うよりも千里くんと過ごしていたのだ。 千里くんと一緒にいると楽しいことしかない。俺が抜けてても笑ってフォローしてくれるし、はしゃいだら付き合ってくれる。 自分のしたいところより俺の意見を尊重してくれる。 キャロルとデートの時はいつも彼女の予定通り動かないとならなかった。道中良さそうな場所を見つけて彼女の予定を変えて行こうよって誘ってもいつも断られた。 これ買って。あれ買って。それはもはや彼女の口癖。 特に金に困っているわけでもないので彼女が欲しがった物は全て与えていた。それをおかしいなって思ったことも苦に思ったこともなかった デートのとき以外で俺が独断で決めたプレゼントを用意したことも何度もある。ただ喜んで欲しかったから。ただそれだけの思いで。 でもそのプレゼントたちは直ぐに店に返品されたり他の人にあげられたりすぐ売りに出されたりしたことしかない。 年下だから甘えてるんだと始めは可愛いと思っていたことも重なるとキャロルのご機嫌を伺うことも疲れて… キャロルといるのに千里くんのことを思い出して無意識にこぼれた笑みを必死で引っ込める。 久しぶりのデートなのにキャロルの話はほとんど聞いてなかった… 「万里」 「何?」 「聞いてる?私の話」 「うん。聞いてるよ」 「もう!つまんない!」 「え?」 それは突然のことで。急に声をあげてバンってテーブルを叩いて立ち上がったキャロルに凄い形相で睨まれて言われた 「もう貴方には付き合ってられない。別れて。二度と私の前に現れないで!連絡もしないで!つまらない男!私が付き合ってあげてたのになんなのよ」 勝手にプリプリ怒り出して俺のスマホを奪うと俺のアドレスから自分や彼女と関係のある連絡先、キャロルに強請られて撮った写真たちも全て消していく。そして俺からの連絡手段を全てブロックして帰っていった 唖然として見送ったけど止めなかった。正直ほっとしてた ふと沢山の視線を感じた。周りの人が見ちゃうほど大声で叫ばれたんだな…みんなの視線が気の毒そうに俺に送られてた まぁ。でも気にすることもなくて、まだたっぷり入っている苦いコーヒーをゆっくりと飲んでいた。 すると俺を呼ぶ声が聞こえた

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