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愚痴を聞いてと口を開いた万里の言葉をおとなしく聞いていた。これまで万里はあまり愚痴をこぼしたことはない。 それを俺に聞かせてくれることが嬉しい 「何かねその時アリスにキャロルの裏アカウント?って言うんだっけ?それとも俺が知ってた方がそれなのかな?わかんないけどそれ見せてもらったんだよね。そしたらね、俺だけじゃなく他に交際相手がいたんだよね。その人と結婚決まったって書いてあったんだよ。でも俺のことはキープしておくって感じのことも書いてあってさ。もう笑ったよね。いやさ、なんとなくそうかなとは思ってたけどそこまで俺もモヤモヤしなかったしそのままにしてたから傷付くより呆れたんだよね。自分自身にね。なんて見る目がなかったんだろうってね。よかったよ。彼女が別れを切り出してくれて」 信じられない…あんなに清純そうだったあの人が?万里からの愛をもらっておいてそれはないんじゃないの?とても腹が立つけれどそれを必死で押さえて声をかけた。あの頃…初めての時みたいに万里の形のいい頭を無意識に撫でていた 「大丈夫?」 「うん」 ほんのり頬を染めて頷いた万里に自分の今したことの重大さに気付き手を離した。 「あ。すいません!つい…」 「ん?何で謝るの?嬉しいよ。もっと撫でて?でね、ずっと言いたかったんだけどさ」 「何ですか?」 「同い年で兄弟でしょ?今はプライベートだし敬語やめない?」 「え?」 「もっと…君と仲良くなりたい…ダメ?」 その言葉は高校時代万里が俺に言った言葉… 友人になるきっかけになった俺にとってはとても大切な言葉…懐かしくて涙が止められなかった…泣いてはいけないと思えば思うほど止まらなくなった 「…っ…」 「え?何で泣くの?嫌なの?」 「ううん…何か…懐かしくて…こんなこと昔あったんだよね…」 「俺が失くした記憶に中に?」 「ん…万里はね…あ…ごめん…呼び捨て…」 「いいよ。俺もせんちゃんて呼んでいい?」 「っ…万里…万里…」 記憶はないのにあの呼び方で久しぶりに呼ばれて我慢なんてできなくて子供みたいに泣きじゃくるのを万里はきっと今困った顔をして見てるのだろう。 情けない…みっともない…だけど…そんなの…嬉しすぎてダメだ…

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