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万里は突然うつむき子供みたいに泣く俺の顎を掬って目元に口づけてきた 突然のことに驚いて顔をあげると懐かしい万里の表情が見えた。 好きだっていい続けてくれていたあの頃の優しい表情だった。 それが一瞬にして色情に染まると突如キスをして来た。 久しぶりのキスに驚きと戸惑い…そして幸せを噛み締める でも…どうしてキスなんか… 「ん…万里?…」 「涙…止まった…よかった」 あぁ…そういうことか…こっちでは挨拶程度のことなのだ…一瞬で奈落の底に落とされた気分だったけどもう一度見詰めた俺の視線の先の万里はまだ俺を欲にまみれた顔で見てた このまま食べられてしまいそうなくらいの万里の色香に当てられてしまいそう… 「せんちゃん…」 「万里…」 「うれしい…名前呼んでくれて…ねぇ…抱き締めていいかな?」 「…ん…」 どうしよう…嬉しい…万里は俺をギュッと抱き締めて背中を撫でてくれた。そして… 「せんちゃん…大好き」 「…え…」 突然の言葉にとくんと大きく胸が鳴った 「これからも側にいて俺を助けてくれる?」 あぁ…だめだ…期待しちゃった… ビジネスパートナーとしてってことだ…そうだよね…そうわかるとすぐに切り替えた 「はい…もちろんです」 「あぁ!また敬語になってる!」 その話し方もすごく懐かしいよ。 万里…俺…好きになってもらえるように頑張るね… 「ごめん」 「いいよ。許したげる。だからもっかいキスさせて」 「へ?」 「拒否権はありませーん」 「え?…ちょ…まっ…んんっ」 「またプライベートで敬語になったら罰ゲームで俺からのキスでーす」 「そんっなのっ!!罰にならねぇし!」 「え?」 「え?あ?」 言ってしまって後悔しても遅くて動揺することしかできない 「なぁに?俺にキスされたかったの?」 悪戯っ子みたいな表情でニヤリと笑う万里。あぁ…好きだ…大好きだよ…しっかりしてるように見えてちょっと抜けてるとこも仕事以外では元気一杯で可愛い口調になるとこも…もう全てを言えないくらい万里と言う存在が大好きなんだ… でも…今の万里は性別は気にならないと言っているけれど多少は嫌悪感があるはずなんだ…そう思うと怖くて怖くて…黙ってうつむいた 「…」 すると、 「俺のこと好きなの?」 万里が思い詰めたように声を低くする… 「違っ!…わないけど…」 怖いけど否定はできなかった。 「…」 万里は何も言わない…やはり気持ち悪がられているのだろう… 「ごめん…気持ち悪いよね?ごめん!今のなし!ごめん」 「やだ。無しにしないもん」 「え?え?」 まさかの返答に更に動揺した俺がいた

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