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一呂side
「一…」
「うん…」
「まだ…思い出してないのにすごいよね。やっぱ万里だよね」
「そうだな。結局さ二人はお互いしかダメなんだろう。俺たちのことを覚えていなくてもきっと会えば…何か変わるのかもしれない…」
「うん。そうだね…でも…よかった…二人がまた一緒にいられて…良かった…もう…千里のあんな姿は見たくないから…」
万里が生死をさ迷う怪我をした。それを知った千里は飯もろくに食えなくなった。
千里はみるみるやつれていった。そのときの千里の痛々しい姿は今思い出しても胸を締め付けるのだ。
でも千里は仕事を休むことなく淡々とこなしていた。その笑顔は図らずも周りを魅了していき追い討ちをかけるように変な輩にストーカー行為を受けることもあった。それでも千里は真っ直ぐ背筋を伸ばして立っていた。只管に仕事をしてた
そうするしか自分を保つ術がなかったのだ。
周りは心配して千里に食べ物を差し入れたり共に過ごそうとした
俺たちのところに数日住まわせていたときもあった。
一人にするとどうなるのかわからない。それほど千里は参ってた。
そしてしばらくしてやっと目を覚ました万里は俺たちの記憶を全て失っていた。
千里はその事実に衝撃を受けていたけど生きていてくれて嬉しいと涙をこぼした。
そしてそれから少しして彼女ができたと聞いた。
千里は笑ってた。嬉しそうに笑ってた。苦しいはずだ…辛いはずだ…なのに万里の幸せを心から喜んでた。
俺はきっとそんな風に思えない。百が記憶を失って他のやつを選んだら俺はきっとその相手を…そして百を…そしてその後を追うだろう
「一…」
「ん?」
「大好き」
「何それ」
「今言いたくなったの…」
「そうか…俺もお前を愛してる。他の誰かじゃダメだ…お前がいなきゃ生きてけない…」
「ふふ…今は溝芽もいるじゃない」
「パパぁ…」
「ごめん。起こしちゃったかな?おトイレ?」
「んん…抱っこ…」
「…溝芽…今俺が話してたのに…」
「溝芽にヤキモチ妬かないの…嬉しいけど。後でたっぷり俺を味わってくれて良いから。」
「…百…あしらうの前よりましになったな」
「ふふ…もう何年一緒にいると思ってるの?」
「…そうだな…」
「パパぁ…」
「うん。向こうにいこうね」
溝芽には悪いが俺は百がいないと生きてけないから多分…でもそんなこと百にいったら泣かれるから言わないけど
溝芽はまだ幼い百に良く似た男の子。常に百にベッタリでなんかやだ。でも二人並んでる姿見ると結局癒される。だって同じ顔だしちょっとアホなとこも似なくて良いのに似てしまったから昔のことを思い出して癒されるのだ。とはいえ溝芽のアホさは計算だがな…
我が子ながら末恐ろしいものだ
父である俺に敵意むき出しのときもある
俺と同じで百が大好きなのだ。そんなとこは似なくて良かったのに…
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