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一と百の睦まじい姿を思い出していたら笑みがこぼれていたみたいだ。 「せーんちゃん」 「ん?」 「楽しそう。」 「うん。楽しみ。みんなに会えるの。」 「一くんと百くんは夫夫なんだよね?」 「うん。一が百に小さい頃から片想いしてたんだよね。俺はずっと一緒にいたけど気が付いたのは高校入るころ。一はね、隠すのとか取り繕うのとかかなりうまい。百に関わることだと別人になる」 「へぇ。どんな風に?」 「…ん~…なんとも言えない…会えばわかるかも…」 「写真とかはある?」 「万里のスマホに入ってない?万里昔から写真撮るの好きだったから」 「そうなの?フォルダ見てなかった。ちょっと待ってて」 直ぐに持ってきてアルバムを開く。ダダダダダーって流れていく画像を見て万里は記憶を失っていても何もなかったことにはしなかったんだとわかる。 その事が嬉しかった。これまで過去を振り返ることなんてなかったかもしれない。けど今こうして向き合おうとしていることはやはり少し嬉しい 「あ!もしかしてこの子たちかな?」 「うん。一番左が一呂でその隣が百代だよ」 万里が開いた写真はあのマンションの部屋に飾ってあるもの。今もあの部屋はそのままになってる。父たちがたまに掃除してくれているみたい。そろそろどうにかしないとならないのだけれどまだ手放したくない大切な場所 「すごいねぇ。顔面偏差値高い…」 「一呂が一番人気あったよ。百はいつも隣に一がいるから顔いいのが霞んじゃうんだよね。あと百はちょっとアホだから喋らなきゃいいのにってよく言われてた。黙って街角にいたらモデルみたいだよ。俺たちと待ち合わせたとき先に着いてた百を遠目で観察してたらやっぱ綺麗な顔してるからか女の子に沢山声かけられてた。けど話し出したらそそくさと離れていかれてた。それ見ながら一が悪い笑顔してたよ。今思えばヤキモチだったのかもしれないね。溺愛具合が半端ないの。自分達の息子にまで嫉妬するくらいだからね」 「そうなの?」 「まだ赤ちゃんの時にしか会ったこと無いけどね、ずっと抱っこされてる溝芽くんに鋭い眼光飛ばしてた。でもそうなると溝芽くんが空気を読むのかにこーって笑って手を伸ばすんだよね。溝芽くんは百にそっくりだから柔らかく笑うの。一の笑顔は貴重だから思わず見入っちゃう」 「…妬ける」 「え?」 「だって一くんに見惚れちゃうんでしょ?」 「…ふふ…でもドキドキするのは万里だけだよ」 「あぁ…もう!せんちゃん可愛い」 「もうおっさんに可愛いはな…」 「あるの。可愛いの」 「万里の方が可愛いじゃん」 「ふふ…少しだけお仕事するね。日程決めるから待ってて」

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