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第95話
「なんだったんだろ?さっきの…ねぇ?せんちゃん」
「あぁ…うん…まぁ色々あるのよ」
「まさか…一の声で…とか?」
「っ…あははっ!」
「笑って誤魔化す…一…すごい…」
「一と百は幼馴染なんだけど昔から一が百を好きでね。色々あってやっと結ばれて…大学卒業してからすぐに同棲を始めて…まぁ…ちょっと…一が百を好き過ぎるし百もまた然りなんだけど俺じゃ到底考えられないような生活もしてて…それでもすごく幸せそうだった。俺はその頃相手は誰もいなくて仕事も始めたばかりで全然余裕なくてさ…そんなとき支えてくれたのが元嫁さんなんだ。すごく気が利くし甘えさせ上手で甘え上手で…今考えれば彼女に万里を重ねてた…父が言ってたんだ。彼女は性格だけじゃなくて顔とかも万里にそっくりだったって」
そんな話しをしていると万里が手を絡めてきた
「…万里?」
「…その頃の俺が羨ましいな…これからの人生の方が長いかもしれないけれど…せんちゃんを惚れさせたのはやっぱり昔の俺なんだよね…それって…すごく…悔しい…あーあ…やっぱり記憶…戻したいなぁ…そんでその頃って多分俺荒れてたと思うから会いに行って殴ってやりたいよ…こんなにせんちゃんに思われてるのにお前は何してんだ!って…」
「あの頃はそれが正解だったのかもしれないよ。だからこそわかったこともあったから…確かに苦しかった…けど俺よりももっと万里が苦しんでたはずなんだ…俺は酷いことしてきてたからさ…だからね…もう…」
そっと唇を塞がれる…柔らかい…優しい口付…
「愛してるよ…せんちゃん…もう…離せないからね…」
そう言ってもう一度唇を塞いでキュッと握る手に力を込めてくれた。ずっと万里の隣りにいたい…
そう思うとまた涙が溢れてしまった…
「泣き虫せんちゃん…」
「万里だって…泣いてるじゃん」
そう言って頬に唇を寄せる。そっと流れる温かい雫を舌先で掬い取る。勿体なくて…全部欲しくて…
「せんちゃん…大胆…」
「…嫌?」
「嫌じゃないよ…全部が愛しい…」
そう言ってもう一度口付けようと顔を寄せるとドアの開く音がした。振り返るとそこには目を擦る溝芽くんがいてとてとてと歩いてきて万里の膝の上に乗る。
「溝芽くん。目醒めちゃった?」
「ん…まりちゃんが添い寝してくれたらまた寝る…お部屋に行こう…まりちゃんちーちゃん」
「いいの?お部屋に入っても」
「二人は特別。おいで」
…今のその年齢には見えない妖艶な笑顔に何故かゾクッとした。…うん…百にそっくりだけど中身は一だな…
なんて思いながら溝芽くんに促され部屋に行くとキングサイズのベッドがあってそこに3人で寝てるんだと教えてくれた。
「今朝パパがシーツ変えてたから綺麗だから安心して寝て」
そう言って真ん中に転がり万里の手を引いた。
「お邪魔します…」
遠慮がちに溝芽くんの横に転がった。
「ちーちゃんはこっち」
開いてる方に促され転がる。溝芽くんは俺と万里の手を握るとふっと微笑んだ
「二人共大好きだよ」
そういうと俺と万里の頬にチュッとしてくれた
「「か…わいい…」」
万里と声を揃えると
「当然でしょ?パパと父さんの子供だもん!」
自慢げに言うと目を閉じ直ぐに寝息を立て始めた
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