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第97話
「んん…あ…寝ちゃってた…」
溝芽くんの手は俺からは既に離れてたのにすっかり寝入ってしまっていたようだ。
「万里…」
万里の方を見て見るとまだ眠っていた。しっかりと溝芽くんに抱き着かれてる
「ふふ…二人共可愛い…」
俺の視線に気付いたのか万里がゆっくりと目を開けてこちらを見た。
「せんちゃ…俺…寝てた…」
「うん。俺も今起きたとこ。小さい子の体温って高いからなんだか眠くなっちゃったね。溝芽くんぐっすりだね。可愛い」
「百にそっくり…かわいいね」
その時ドアが開いた
「はよ。起きたんだね。ご飯出来てるからおいでよ」
「溝芽くんも起こそ」
「溝芽はまだ寝せてて大丈夫だよ。一先ずおいで」
溝芽くんのことは気になるけれど取り敢えず百についてリビングに向かうと湯気を上げた美味しそうな料理が並んでた。
百は昔はまったく料理できなかったけど一に教えてもらってメキメキ腕を上げて今はレシピ本を出すくらいになってる。
まぁ全て表立って動いてるのは一なので百を知る人はあまりいないけど
「おいしそー!!!」
万里が目を輝かせながら手を叩いた
「味の保証はするよ。一が沢山教えてくれたの」
「楽しみ!あ!ごめんなさい!勝手にベッド借りちゃって」
「ううん。構わないよ。溝芽が離してくんなかったでしょ?溝芽いつもなんだ。まぁそれも可愛いんだけど。よっぽど二人が気に入ったんだね。溝芽面食いなんだよ。俺と一緒でねぇ」
そう言って甘い視線を一に向けると一はふわりと笑った。
「おぉ…」
「何?万里」
「いやぁ…そんな顔もできるのかと…」
「どういう意味だよ。記憶なくしてもいちいちイラッとする言い方するなぁ。お前は」
「綺麗だなぁって思っただけだよ」
「…当然だろ。俺だし。さぁ食おうぜ。せっかくの百の料理が冷めちまう」
「溝芽くんは本当に大丈夫?」
「あぁ。あいつは俺と一緒に食べたがらねぇんだよ」
「…え?それ大丈夫?」
「…仕方ねぇだろ。百を独占してる俺が気に食わないんだと」
「それ!だめ!!俺もそうだったけど後悔したもん!だからだめ!!」
「万里?…そっか…ガキの頃の記憶はあるんだっけ?」
「そう。俺はね、父が苦手だった。すごく怖かった…だから一緒に食べたくないってずっと別に食べてた。けど…やっぱりもっと一緒に過ごしておけばよかったって母が亡くなったときに思ったんだ。どうしていいかわかんなくなったからさ。だから…」
「…うん。わかった。けど溝芽寝起き悪過ぎるから…万里…頼んでいいか?」
「うん!いってくるね」
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