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そして春になった。僕は無事合格できて今日は入学式だ 式がどんどん進んでいきこれから生徒会役員の紹介。 ずらりと並んだ面々に一際目を引く史澗くんがいた。 「生徒会書記、久遠寺史澗です」 よく通るいい声で史澗くんが言うと周りがざわつく。その声のほとんどは史澗くんの容姿を褒める声だった。 史澗くんが真面目に挨拶をしてるのがなんだかおかしかった。僕の知ってる史澗くんとは別人みたい。史澗くんをじっと見てたら目が合った気がした。史澗くんが微笑むと入学式中とは思えないほどの歓声が上がった。 本当に人気があるんだなって思ったら嬉しくてだけど複雑だった。 学校見学のとき連絡先を交換していた史澗くんと穰くんとはちょくちょくメッセージや電話でやり取りしててこんな真面目な感じなんて一切ない史澗くんを思えばおかしくて仕方ないのだ。それを呆れて見てる穰くんの姿がすぐに思い浮かんだ。 「史澗に騙されるな」 散々穰くんに言われた言葉を思い浮かべる。穰くんは言ってた。史澗くんが素の自分を晒すのはごく限られた人間で普段は真面目な人として生活してるんだって。だから素を知ってる僕は貴重な人間なんだって変な自信もついていた。 入学式が終わり学校の説明とかなんか色々あるけど早く二人に会いに行きたくてソワソワしてた。 「東雲。聞いてるか?」 担任から言われてハッとするとクラスのみんなが笑っていた。 やっぱりここも東雲を通して僕を見てる人ばかりだったけど笑ってくれるだけいい。 そもそも教師が僕に注意することなんてこれまでなかったからなんだか嬉しかった。みんなが笑ってくれたことも ホームルームが終わってから僕は生徒会室へ向かった。この学校は独自の学校の決まりがあって受験のときの結果が上位だった人は必然的に生徒会室役員補佐として前期は生徒会に籍を置くことになっていた。 「失礼します」 緊張しながら生徒会室に入るとそこには生徒会メンバーが集まっていた。 メンバーの中に史澗くんと穰くんを見つけて目配せすると大丈夫だよっていうように頷いてくれた みんな揃ったところで自己紹介が始まった。次は僕の番 「東雲垓です」 名乗ると部屋の中がざわざわしだした 「あの東雲?」 そんな声が聞こえてきた。そんなのわかってた。わかってたけど気持ちいいものではない。でも他の誰もが東雲を通して僕を見ているとしても僕は以外に平気だった。だってそれだけで見ない人がここにいるから 「東雲くん。よろしくね」 会長が優しく微笑んだ。会長は東雲と肩を並べるくらい大きな会社の三男だ。物腰が柔らかく皆を引っ張る能力のある人。 そうしてみんな挨拶が終わってこれからどんな仕事をするのか説明を受けた。

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