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実は僕は会長とは初対面ではない。
会長の会社主催のパーティに何度か参加したことがあるのだ
長男や次男ではなく彼が主となり皆をもてなしていた
僕とあまり歳は変わらないのにその堂々とした佇まいに尊敬を覚えたくらいだ。それに彼の父親である社長は行く行くは彼を跡継ぎにすると話していた。
長男も次男も若くして自ら別の会社を立ち上げ成功を収めている。それもあって元々会社を継ぐ気はないようだった。彼らは会長のことを尊敬し大切にしていた。
それに会長がこの高校にいるのは会長のお父様の意向だ。一般家庭からそれなりの家庭まで多くの人が通っているこの高校で色々な価値観の人との交流を深めこれからも尽力してほしいということだ。会長自身も所謂上流家庭が多く通う学校より一般家庭の人たちと交流がしたいと言う思いがありこうしてここを選んでいたのだ。
僕がここに決めたのは史澗くんたちといたいという気持ちが大きい。だけどここを見学しようと思ったきっかけは彼が通っていたからなのだ。
彼女の言うことは世間の噂話なだけ。彼の頑張りを知らない大人の噂話。妬み。嫉み。
それを鵜呑みにして実際見てもいないのに軽々しくそんなことを言えるなんて。
彼女が会長の補佐になったのだって誇るべきことなのに…
「…すごく…下品だね。仮にも先輩を、下に見てるみたいな言い方僕はあまり好きじゃない。そういう話をしたいならよそを当たってくれる?」
「あっ。ちょっと!東雲くん!」
彼女は僕の腕に腕を絡ませ自らの膨らみを僕に擦り付けた。
「そんな事言わないで…」
上目遣いで見られたところで不愉快なだけだ。何も知らない男ならそれでよかっただろうけど生憎僕はそういうのには興味がない
「本当に…下品だ…離してくれる?あなたはもっと会長を知った方がいい。そんな話すべて偽りだったことがわかる。折角会長の補佐になれたんだ。あなたは元はそんなに愚かな人ではないでしょう?誇りこそすれ見下すのはどうかしている。真実を見極める事が必要だ。折角あの人の補佐になれたのだから得るものが多くある。腕を離して」
彼女は渋々腕を離した。
「ごめんなさい…私が…軽率だった」
「わかってくれてよかった。あなたならきっとちゃんと人となりをわかると僕はそう信じているよ」
微笑みかけると彼女は頬を染めて俯いた。
「あの…ありがとう」
「えっ?何が?」
「叱ってくれて…」
「あぁ。いや。僕が単純に不快だっただけだ。僕は会長のことを以前から知っていて尊敬しているんだ。本当に…あの人は素晴らしい人なんだよ。それをあなたにも知って欲しい」
それからなんでもない世間話をして彼女と別れた。
「垓くん」
そしたら思わぬ人から声がかかった
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