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「本当は淫乱なんだって?初な振りして多くの男を相手してるんだろ?」
なんでもそんな話になってるのか僕には見当もつかない。
…さっき水を買いに行ってくれたあの子が戻れば助けを呼んでくれるかもしれない。ほとんど抵抗にはならない抵抗をしながら彼を待つ
「ふっ…あいつなら戻らねぇよ」
「えっ…」
「今ごろあの男のところに行ってるさ。俺にも味見させろよ」
史澗side
「久遠寺。そろそろ交代だろ?」
「そうだね。ごめんね。ここよろしくね」
これから垓くんと一緒に見回りだ。その時後夜祭に誘おうと思っていた。
実は垓くんと回れるのは仕事とはいえ嬉しくてちょっと楽しみでニヤけそうになる顔を抑えるのに必死だった
垓くんには友達からって話していたけど一緒にいればいるほど垓くんが愛おしくて大切になっていった。
垓くんは真っすぐで真面目でちょっとだけうっかりしてるとこもあるけどやっぱりしっかりしててけどやっぱりほっとけなくて。
生徒会室に向かっているとスマホが震えた。いつもは直ぐに確認はしないのだけど垓くんかもしれない。そう思って画面を見ていると穣くんや他の生徒会メンバーが集まってきた
「史澗」
「穣くん。連絡見た?」
「あぁ。何でまたあっちの棟なんだろうなぁ。開放してないのに」
「会長。取り敢えず私と穣で向かいます」
「彼らも連れて行って。何かあるといけないから。頼んだよ。僕はこっちで連絡待っている。」
会長が連れてけと言ったのは副会長と体育委員長。二人とも格闘系の部活に入っている。二人とも全国レベルの人間だ。
四人で向かっていると小柄な生徒がやってきた。
「久遠寺くん」
「あぁ。久しぶりですね」
彼は以前生徒会役員をしていた人だ。家の事情で転校していった人で転校する前日告白されたのだ。
だけど俺は元々異性愛者だしそのその気持ちに答えてあげられなかった。
彼は泣きながら笑って立ち去っていった。
それ以来だから約1年ぶりになる。
「あの…ある人に伝言を頼まれて」
「伝言?」
「うん。東雲くんだっけ?あの東雲の息子さん」
「…彼が何の伝言を?」
全く接点がないはずの彼に垓くんが伝言を頼む意味がわからない。
「恋人ができたのでもう一緒にいられないって。僕の友人が恋人みたいで」
そんなのもっと垓くんが彼に伝える理由がない。
「彼とは学年も違いますし生徒会の仕事の時しか一緒に過ごすことはない。交際しているわけでもないのにそんな伝言を頼む理由はありません。では。僕は仕事なので失礼します」
「待ってよ」
「急いでいるので。」
「何で!?何でなの?」
「え?」
「どうして…どうして彼はいいの?だって…君はあの時…なのに何で彼なの?顔?それともやっぱり東雲の御曹司だから?」
そんな訳はない。垓くんだから大切なんだ。誰よりも何よりも…
「だとしたら?君に東雲以上の価値はありますか?」
思った以上に冷たい声が出た。そんな俺を初めてみた彼は怯えの表情を見せ一歩後退った。
「っ…そんなの…」
多分垓くんを連れ去ったのは彼だ。
「私は自分に利益のある人が大切です。それだけの話だ。東雲くんは大変価値のある人間です。そんな彼に何かあれば…もし仮にあなたが…もしくはあなたの友人が何かしていたとしたら…私ではない。東雲が黙っていないでしょうね。まぁあなたは何もしてないでしょうから関係ないでしょうが」
そういうと彼はさーっと顔色を変えた。そんな彼を放置し足早に向かう。きっと何か良くないことが起こってる
徐々に歩く速度をあげ気付けばほぼ走っていた。
会長に彼のことを連絡し間もなく彼から居場所を聞き出した会長から連絡が来た。
垓くんは今はもうあまり使われていない資料室にいるとのことだった。
一緒にいるのは彼の友人だという東雲と肩を並べるほど大きな企業の息子だ。
そんな彼に、垓くんは多くの男と関係を持っているという偽りの情報を流してしまったらしい。俺と一緒にいる垓くんという存在をどこかで知り垓くんに嫉妬したそうだ。
今垓くんと一緒に居るであろう相手は以前から垓くんに好意があり垓くんに以前告白し振られてしまったらしい。
そんなとき彼は垓くんが多数の男と関係を持っているという偽りの話しに激怒した。そんな彼が垓くんと一緒にいて何もしないわけがない
「垓くん!」
資料室に入ると大きな男の下で大きな声で抵抗する垓くんの姿があった。
俺の中で何か切れたような気がした
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