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穣くんが電話を終えて帰ってきた頃にテーブルの上には湯気の上がる食事が用意されていた。
「史澗。相変わらず料理すごいなぁ」
「へへっ。楽しいよ?何をどのくらい掛け合わせればどんな物ができるのかってワクワクするの。勿論失敗だってあるけどね」
「全部史澗くんが作ったの?」
「え?今さら?垓くん俺が料理好きなの知ってるじゃん!だし食べたことあるじゃん!この家には何度も来たことあるのに」
「…お手伝いさんでも雇っているのかと」
「あははっ!うちはそんなの雇うほど裕福じゃないよぉ!あ。嫌味みたい?違うからね!よしっ!食べよ?いっただきまぁす」
みんなであーだこーだ話しながら楽しい食卓の時間が過ぎていった。
お腹いっぱいになってなんだか眠くなってしまった。だけど…エッチしたいし…
そこで意識が途絶えた
史澗side
「あー。寝ちゃったか」
子供みたいに食べながら寝ちゃった垓くんをそっと横抱きにして運ぶ。何かあれば直ぐに気付けるよう寝室のドアは開けたままだ
「穣くん。ごめんね。ありがと」
「いや。でもお前本当に良かったの?あんな事して」
「うん。垓くんには俺だけじゃないってわかっててもらわないとまた無茶しちゃうし。ちょー妬けたけど。だーってさぁ穰くんのでトロトロになるなんて。嫉妬してるってバレないように必死だったよ。とは言え…相当興奮しちゃった。あの子可愛い」
垓くんが史澗くん史澗くんって俺を誰よりも慕ってくれてることはすごく嬉しい。俺もそれだけ垓くんが大好きで愛しくて堪んないから。けどいつかは離れないとならない日が必ず来る。そんな嫌な予感はよく当たるんだ。
そもそも、住む世界が違うということを嫌でも思い知るのだ。
今日のあいつだってそう。本当はあんなヤツじゃないことを俺は知ってる。若気の至りと言ってしまえばそれまでなのだ
俺の兄はその会社で重要なポストにいる人だ。そこのお家事情なんていくらでも入ってくる。今は荒れているが彼が一族で一番秘めたる力を持ってる。
行く行くあの大企業を引っ張るのは彼だと彼しかいないとまことしやかに囁かれてる。
彼の他の兄弟は人柄はとてもいいが決断力に欠けていて重要なことを決定する力はない。
「あーあ…告白するつもりなんてなかったのにな…」
「史澗」
「こんなに好きになるなんて思ってなかったんだ…程よい距離でいたかった。だけど…どうしても…垓くんと一緒にいたかった。泡沫の夢だとしても…」
穣くんは静かに俺の話を聞いてくれた
そして黙ってぽんぽんと頭を撫でてくれるのだ
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