124 / 132

24

穣side 史澗とは幼馴染。 浮世離れした綺麗な人。それが史澗だ。綺麗で所作や話し方も優雅でなんか他の子供達と違う気がしていた。 そう思っていたのは俺だけじゃないはずだ。 誰もが遠巻きに見る美しくも儚い花のようの史澗と仲良くなるのが申し訳ない気がしたのか遠巻きみ見つめるだけだった。 そんな史澗と急速に距離が縮まったのは本当に些細な出来事だった。 史澗がある日大きな木に向かって戦いを挑んでいた。その頃流行りの戦隊アニメの真似事をしていたのだ。 「えいっ!やぁっ!」 と本当に普通の子供なのだ。それに驚いた。 「…そこ!違うよ!」 史澗の繰り出した技の真似事のポーズが少し違っていたのが気になってつい声をかけてしまった 「えっ!!どこ?どこが違った?えっ!」 焦る史澗があまりにも可愛かったので思わず笑った 「穣くんでしょ?ねぇねぇ!教えてっ!」 話したこともない俺の名前を知っていることにびっくりした 「俺のこと知ってんの?」 「知ってるよ!一番足が速くて強くてかっこいい人!わぁ!うれしいなぁ。話してみたかったんだよ。へへへっ」 無邪気な笑顔に思わず顔が赤くなる 「ねぇねぇ!違ったところどこ?」 その後日が暮れるまで練習して別れた翌日から史澗はニコニコと俺のところにやってきてはヒーローごっこをしたがった。そんな史澗の様子にこれまで遠巻きに見ていた人間たちが寄ってくるようになりいつの間にか中心人物となってきた。 そんなある日のこと史澗の可愛らしさに魅了された変な大人が史澗を連れ去っていった。 史澗が見つかったのはその翌日のことだった。 戻った史澗は元の表情のあまり変わらない人形にもどっていた。 史澗は心を閉ざした。それでも俺のところにはやってきて俺のとこでだけ素の自分を出すようになった。誰かが近寄ってくるとすっと仮面をかぶるのだ。 連れ去った相手が仲の良かった友人の年の離れた兄だったというのが大きかったようだ。 気を許してはいけない。また怖い思いをしてしまう…そう幼心に思ったのだろう。 だから今でも信用している近しい人だけが史澗の素を知ってる。生徒会長や、副会長なんかがそうだ。 他の委員会の奴らはおそらく知らないはずだ。 史澗の素はあまりにも無防備で隙がありすぎる。この一年で俺は史澗から離れる。心配だがそればかりはどうしようもないことで 垓と初めて会ったにも関わらずすっかり仮面を被り忘れた史澗の姿を見た時は驚いた。だけどホッとしたのだ。 垓は史澗より年下だから史澗の側にいてやれるから。 まさかその垓に心まで持ってかれるなんて思ってなかった。垓が一目惚れしたのはすぐわかったのだが。そのまま幸せになって欲しかったのに垓とは因果があって… その日は突然やってきたんだ

ともだちにシェアしよう!