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「別れる?何で?僕何かした?」
「ううん。垓くんは…なんにも悪くないよ。ただ俺が…うん。他のところに行きたくなっただけ」
「…好きな人…できた?」
こんなに素敵な人だもん…いろんな出会いもあるし…そんな人が現れたのかもしれない。
「どうかなぁ?でももう垓くんとはおしまい。これまでとーっても楽しかったよ。幸せだったよ。この1年半…ありがとうね」
「やだ!いやだ!!別れたくない!!」
必死に…みっともなく史澗くんの足元にすがる
「やだ!何でもするから…言う事聞くから…お願い!僕を捨てないで!」
「何でも?」
「うん!」
「じゃ今すぐ俺を解放して?」
史澗くんから今まで僕に対して発されたことのない冷たく重い鋭い一言が飛び出した。史澗くんはもう僕をその瞳に映してさえいなかった…
そのことがショックでふっと力が抜ける。
「さよなら。垓くん」
顔も上げられない僕はみっともなく床に突っ伏したまま一人で泣き喚いたのだ。だけどここには大丈夫と慰めてくれる人は誰もいない。
翌日は顔が酷すぎて学校もいけなかった。初めて無断で欠席する僕に父は何も言ってこなかった。
理由が全く分からない…別れると言われる前まで普通に一緒に笑ってたんだ。愛してるって互いに囁きながら深く深く抱き合ってたんだ。
それなのに…
「どうして…」
その問いに答えてくれるものは居ない
史澗くんにしつこく連絡をいれるけれどもう既に全てがなくなっていた。穣くんに聞いても何もわからないとのことだった
翌日少しはマシになった顔で登校する。何事もなかったかのように振る舞う。そうでないと叫びだしそうになるから。今日から三年生は受験勉強のため全員が休みとなって卒業式の日までほとんど出てこない。
それに伴って仕事はこれまで以上に増える。
どんどんストレスが溜まっていく…そしてついに俺はおかしくなってしまった。
学校が終われば大人っぽい格好に着替えて繁華街に繰り出した
史澗くんと出会った頃より随分と背も高くなって筋肉もついた。顔だって中性的だったのが男そのものになっていた。
自分の容姿が優れているということは前々から自覚はしてた。
だからそこに一歩踏み入れば勝手に人が寄ってきた。
声をかけられたら共に如何わしい場所へ向かい名前も知らない初対面の人間と交わった。それが一番手っ取り早く史澗くんを諦められる方法だった。
史澗くんや穣くんに叩き込まれたスキルを存分に活かし相手を満足させていった。
穣くんみたいに同じ人間とは一度しか寝ないことを守り身分を明かすこともなかった。
男だろうが女だろうが構わなかった。でも俺の中に他の人間は入れたくなかった。
だからそっち需要の人間はうまくかわして毎晩のように楽しんだ。
その後強烈な罪悪感に苛まれるけれどそんなのも始めのうちだけだった
素の自分は封印し作り上げた理想の男を演じきることでストレスを発散させた。
勿論学内の人と交わるようなことはしなかった。
そうして卒業式の日を迎える。史澗くんは来なかった。もう既にこの街から去ってしまったのだろう。
何もかも諦めた僕は作り上げた自分で残りの高校生活を送ることにした。
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