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史澗side
二人と別れて俺は穣くんのとこに向かった。一人で抱えるのは苦しすぎた。
いつかは来るって思ってた…だけど…思ったよりもずーっとずーっと早かった…
「史澗!!」
「…穣くん…」
「…なんて顔してんだ…」
穣くんに今日の話をするととても複雑そうな顔してた。
「俺には…何もできない…」
穣くんは何も言わないで抱きしめてくれた。穣くんの優しさにぷつりと緊張の糸が切れ声を上げて泣いた
泣き疲れて眠るまでずっとずっと抱きしめてくれた。
翌日は泣いたのが嘘みたいにいつも通りだ。
きっと穣くんが手当てしてくれたんだろう。
「史澗。行けそうか?」
「うん。大丈夫。だって俺だよ?大丈夫。平気でいられる」
残りの少ない時間を垓くんとできるだけ一緒にいたいんだ…
そう思って色々と考えた。
進路先も変えることにした。きっと俺が側にいたら垓くんは進めないから。すっかり俺を忘れてくれないと困るから…
「垓くん。おはよー」
「史澗くんっ!」
満面の笑みで駆けてきた垓くんに涙が溢れそうになるのを必死でこらえていつもの笑顔で話す。
その日からデートだったり旅行だったり…いっぱいいっぱいした。
垓くんは既に東雲の会社のこともやってたりするのでなかなか予定は合わないかもしれないと思っていたけどお祖父様とお父様の配慮なのだろう。うまく予定を立ててくれたのかどの予定も狂うことなく実施できた。
一緒にいると楽しくて幸せで…だけれどそんな日々も刻一刻と終わりへ近付いていた。
何で俺の知らないところで事が大きく変化していったんだろう…もっとうまくやれてたはずなのに…
そうして最後の日を迎えた。離すのが惜しくていつも以上に垓くんを執拗に抱いた。
最中は涙が出たって不自然じゃない…快楽でボロボロと涙を流す垓くんに気づかれないよう涙してた。
これが終わればもう彼は俺の手を離れていくんだ…
垓くんに別れを告げたその足で東雲が準備した屋敷に行く。
ここにいたらもしかすると垓くんがやって来てしまうもしれないから。
「垓くん…もう別れよっか?」
出来るだけいつも通りに…冷静に必死で悲しみを堪えて言葉を紡ぐ。あっという間に垓くんの瞳には涙の膜が張った
「別れる?何で?僕何かした?」
「ううん。垓くんは…なんにも悪くないよ。ただ俺が…うん。他のところに行きたくなっただけ」
本当に…君は何も悪くない…嫌だな…手放したくないよ…
「…好きな人…できた?」
そんなわけないでしょ?今も必死でこの思いを隠しているのに…
「どうかなぁ?でももう垓くんとはおしまい。これまでとーっても楽しかったよ。幸せだったよ。この1年半…ありがとうね」
これは本音だ。本当に幸せで楽しくてずっとこの時が続けばいいって叶わない夢を抱き続けてた
「やだ!いやだ!!別れたくない!!」
必死に俺の足元にすがる垓くんに手を伸ばして抱きしめて嘘だよって愛してるんだって言いたい…だけど…出来ないんだ…俺がもっと大人だったら…垓くんや東雲を守れる強さがあったなら違っていたのかな…本当に…本当に…悔しくて悔しくて
「やだ!何でもするから…言う事聞くから…お願い!僕を捨てないで!」
嫌だよ。離れたくないよ…でも…ダメなんだよ…どうすることもできない…
「何でも?」
「うん!」
「じゃ今すぐ俺を解放して?」
泣き崩れた垓くんを出来るだけ視界に入れないよう遠くを見つめながら言った。言ってしまった…これでもう…本当に最後…最後なんだよ…
これ以上側にいたら俺も泣き崩れてしまいそうで直ぐに踵を返しその場を後にした。帰宅して準備していた荷物を持って家を出た。
それからあっという間に時は流れた。卒業式にははじめから出ないつもりだった。
まだ誰もいない早朝の学校をゆっくり歩いてまわって最後に大きな門の前で礼をした。
本当に幸せだった。楽しかった。苦しかった。辛かった…でもね。
君に出会えてよかったよ。垓くん。誰よりも愛しい君に…
あいしてる
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