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史澗side
大学にいってからも穣くんとは連絡を取り合っていて垓くんが元気なのは知ってた。
だけど今の垓くんは俺の知る垓くんではなかった
毎晩違う人間を抱き夜を過ごしていた。
垓くんはここ一年でぐっと成長して美しい男性になっていた。身長もいつしか俺とそう変わらなくなってたし程よくついた筋肉も美しかった。
そんな形の垓くんを放っておく人間がいるはずもなく…。
それがとても悲しくもあったが逃げ出した俺にそんな事言う資格なんてなくて…
そんな垓くんとは対象的に俺はいかに目立たないか気をつけた。
顔を髪や眼鏡で隠して常に俯いて過ごしていた。
研究に没頭することで気を紛らわせていた。
きっと今の俺をみたらあの頃の人たちはびっくりすると思う。必要以上の会話はしないで一人で過ごすことを選んだ
この容姿で得したことが全くないとは言わない。だけど同時にこの容姿でひどい目に遭ったこともあった。
両親や兄たちに全く似ていない容姿に悩んだことだってあった。
それをネタにいじめられたことも多々あった。だけどこの顔だからそれを乗り越えてこられた。
両親を全く恨んではいない。だって物心ついたときには俺には俺を大切にしてくれる家族がいたから。
今こうしてここに通えるのもこの近くに兄がいるからだ。
状況を知ってる家族たちは俺のことを本当に心配してくれてる。
兄が近くにいるから安心してくれるのだ。
年の離れた一番上の兄は早くに結婚していて兄の子供たちの方が年が近い。
彼らも本当に良くしてくれるが流石にそこに身を寄せることは奥さんもいるし憚られた。
だからその近くに家を借りてる。研究の合間を縫ってバイトもしてるから自分で家賃や生活費なんかは工面してる。
本格的に研究が忙しくなると大学に泊まり込みになる。そうなると寝食を忘れることも多くあった。
そんな俺に話しかけるものはあまりいないが唯一俺に飯を差し入れてくれるものがいた。
彼女はとても目立つタイプだ。すごく派手な容姿をしていて俺があまり得意とするタイプではない。
だけど見た目と違ってすごく面倒見がいい人だった。
「おーい。久遠寺!そろそろ飯食え!」
女は一口大の食い物を無理やり口に突っ込んできた。
「やめろ!」
「うるっさいっつーの!だいたいさ、人の役に立つために研究してるような人間がさ、自分を蔑ろにしてどうすんのさ!迷惑なんだよ。こんなところでそんな死んだような目ぇして存在してんのが。人のために役立ちたいならまず自分だろ?死んだら何もできないんだよ!なにもかも水の泡にすんのか?久遠寺がいたからこそできたことも多くあるんだからさ。たまには息抜きしろ!な?」
「お前に何がわかる」
「わかるわけない。だって私はあんたじゃない。だけどきっと何かあったからここにいるってことくらいはわかる。わざとそんな見た目にしてるのくらい知ってる」
「は?」
「…あんた…穣の友達だろ?」
「…は?」
なんでこんなところで穣くんを知ってる人間がいるんだ?
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