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史澗side
アゲハさんのストーカーは店の客だった人物だ。それなりに地位のある人でお金も多く落としてくれる一番の上客ってやつ。
その彼のアフターのお誘いをずーっとお断りしてたら男が変にアゲハさんに執着し始めたらしい。
両親にも相談してみて警戒はしていたのだけれど…相手が悪過ぎたのだ。その後両親が事故にあった。一緒に乗ってた車のブレーキが壊されてた。何か細工するその男の側近とそれを見守る男の様子がバッチリ防犯カメラに映ってた。証拠としてそれをもって警察にも行った。だけど相手が悪く…警察は取り合ってくれなかった。その事故でご両親は幸いケガで済みはしたがその話を聞いて自分と重ねた俺は無理を承知で東雲に手を貸してもらった。
東雲は快く手伝ってくれてアゲハさんへの嫌がらせと両親の治療費などすべて解決してくれた。
その時に垓くんのお父さんに垓くんの結婚が決まりそうだと聞いた。あれから3年の月日が流れてた。大学を卒業を期に入籍する手はずだそうだ。
結婚が決まりそうだと聞いても思ったより苦しくなかった。むしろ嬉しかったのだ。
「史澗。ありがとうね。」
「ううん。俺は何もしてない。ただ側にいただけじゃん。」
「でも…」
「垓くんのこと?」
アゲハさんにはどうしてここでそんな風に生活していたのか少し前に話した。垓くんを心から愛していたこと。ずっとずっと今も忘れられないってこと。
「だって…結婚」
「あぁ。うん。いつかは来るってわかってたから。でもね。そんなに苦しくないよ?だって今はアゲハさんが側にいてくれて一緒に笑って過ごしてくれるから。アゲハさんに俺は救われたんだよ?」
「ねぇ。史澗」
「ん?」
「私じゃだめ?私史澗のことが好きなの。垓くんの代わりになんてならないけど私はあんたと一緒に過ごすことがとても…楽しいの。」
「えぇ?やっぱり顔?」
「それもあるけど」
「あるのかよ!」
「だけどあんたが気を抜いて息できる場所が私の隣であればなぁって。私ってこの見た目じゃん?だからすごく軽いと思われがちなんだけどさ…好きな人って…これまでいたことなくて…だから彼氏とかもいたことなくて…えと…身体の関係の相手なんかもいたことなくて…すっごく…面倒だとは思うんだけど…浮気なんかは絶対しないし!」
「えぇ?その情報は開示し過ぎじゃない?面白ーい」
「ちょ!」
「あーあ。そっかぁ。やっぱ顔って大事なんだねぇ。見た?周りの掌返し」
ここ最近やたら話しかけてくる人が増えて来た。この顔だからアゲハさんの隣にいても不釣り合いじゃなくなったから。やっぱりみんな顔がいい人が好みらしい。
「みたよ!気に食わないわぁ。史澗が死にそうにしてるとき誰も相手しなかったくせにさぁ!」
「ははっ!本当だねぇ。だけどアゲハさんだけは違ったね。穣くんの頼みとは言えよくしてくれたよねぇ。それに俺が始めから素のままでいられた貴重な人。だからすごく息がしやすかった。だけどね俺は垓くんみたいに君を愛することはできないよ。きっとずっと垓くんのことを思い続ける。君を一番になんてできないよ?でもね俺ってわがままなんだ。それでも君の隣にいたいって思ってる。こんなのでもいい?」
「いいよ。それも含め史澗でしょ?」
「ふはっ!確かにぃ!てことでよろしくお願いします」
こうしてアゲハさんと交際が始まって垓くんが結婚した頃俺たちも入籍した。
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