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それから慌ただしくなりまたも帰宅できない日が続いていた。 合間を縫って家には連絡を入れていた。 その日なんだかとても胸がざわついた。 「悪いけど…今日の予定調整してくれない?」 「かしこまりました」 俺の有能な秘書はそんなのお手の物だった 「家にすぐ送って」 帰宅すると家に明かりがついていない。そんな中万里の悲痛な叫びが聞こえた。 「ママ!ママ!!」 その声に導かれ転がるように部屋に入ると倒れている妻を見つけた。 「京華ちゃん!京華ちゃん!京華!!」 「…あ。垓。お帰りなさい。」 「ちょっと!どうしたの?病院行くよ!万里!パパの車の鍵用意してくれる?それと北川に連絡してくれる?」 「うん!!」 万里はパタパタと必死に準備してくれた。秘書兼運転手の北川に電話してもらっている間に車に乗せる。 「万里!おいで!」 「僕はお留守番してる。北川さん今から来てくれるから大丈夫。今はママを優先して!早く!ママ今朝からご飯も食べられてないんだ…だから。ママをお願いします」 万里は涙をこらえながら深く頭を下げた。 「わかった。行ってくるね。家をよろしくね」 「いってらっしゃい!!」 万里に見送られて病院に向かう。彼女はそのまま入院となった。 「ごめん…ごめんね…京華ちゃん…こんなになるまで…俺…気付けなくて」 「あははっ!泣かないでよぉ。…ねぇ。垓。私ね本当に幸せだったよ。だってさ初恋の相手と付き合えて結婚できて万里みたいに自慢の息子もできた…だから…そうだなぁ…後悔があるとしたら何回も垓に病院に行くように言われてたのに病院に行ったふりして行かなかったことかなぁ。万里に病院行ったって嘘ついててごめんね。私ね、風邪1つ引いたことなかったの。だから病院なんてほとんど行ったことなんてなかった。行かなくたって平気だって自分を過信しすぎてたのよね。だから罰が当たったかなぁ…謝るのは私の方。ずっと一緒にいるって約束してたのに…その約束守れない…最期の最期にそんな顔させてごめんね…ごめん…垓…私の代わりに約束守れる人現れたら…遠慮しないでね!遠慮なんてしたら許さないからね!だけど…欲を言うなら…もっと…垓と一緒に万里を見守りたかったな…孫やひ孫にも会いたかった!垓と一緒に年取りたかった!あーあ…もう!私ったらいつも肝心な時にこうなんだから!垓!ねぇ。垓…笑ってよ。ね?貴方の笑顔が大好きなの」 「京華ちゃん…」 京華ちゃんは細くなった腕を必死で伸ばして俺の頬に触れた。 「垓。愛してる。だから…幸せになって…お願い…自分のことも大切にしてよ?ありがとね。垓。私と一緒にいてくれて…」 微笑みながらゆっくりと目を閉じた彼女がもう目を開けることはなかった… 俺は本当にバカだ…こんなになるまで気付かないなんて…こうなってから気付くなんて…最低な人間だ…こんなのが…多くの人間を従えていいわけない…無理だよ…京華ちゃんがいないなんて…無理だって…またいつもの冗談だって笑ってよ…ねぇ…京華ちゃん… 病院中に響き渡るんじゃないかって声で泣き続けた。その後万里を北川に連れてきてもらった。 「万里…ごめん…ママを…守れなくて」 「…どうして?何で…ママ…寝てるの?起きないの?ねぇ!何で!何で!!パパが悪いんだ!!ずーっとずーっとママを…ママを…放っておいたから!!だから!!悪いんだ!パパが死んじゃえばよかったのに!!」 万里はぐちゃぐちゃに泣きながら俺をぽかぽかと叩いた。俺は何も言えなかった…だって万里の言う通りだから… ただただ涙を流しながら万里を抱き締めるしかできなかった。 あの時…いつかまた俺が史澗くんの側にいられる時が来たら…もっと頼ってくれますか?なんて一瞬でも思っちゃったから…バチが当たったのかな…京華ちゃんを…万里を愛しているのに来るかもわからないことを思ってしまったから…

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