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「…万里の命があることを…喜びたい…だけれど…なんで…」 万里が抗争の流れ弾にあたり命は取り留めたものの高校からこれまでの記憶を失ってしまったのだ だから万里は千里くんだけでなく百代くんや一路くんのことも史澗くんと僕が籍を入れたことも覚えていないのだ。 そして… 「まさか…違う人と婚約してしまうなんて…」 万里は記憶をなくし不安定だった時に担当していた看護師と恋に落ちたのだ。とても綺麗な人ではあるのだが… 男同士なんて気持ち悪い…どうして二人ともとても綺麗な容姿で裕福なのにわざわざ互いを選んだのか理解ができないと面と向かって言ってしまうようなある意味素直な女性だった。 理解をできないことが分からないわけではないしそれを否定する事もしない。 けど大切な息子の相手が彼女というのは素直に喜べるものではなかった。 万里は彼女に夢中で彼女の言いなりになってしまっていた。 「史澗くん。お願いしていい?また僕のわがままなんだけど」 「キャロルさんのこと調べるんでしょ?」 「うん」 「いいよぉ。けど向こうだから時間がかかるかもしれない。待てる?」 「うん」 史澗くんはいろんな方面に顔が利く。それでいて頭も切れるから昔からそういう事はお手の物だった。調べているのと同時期に千里くんが家にきてくれた 「会長」 「…だーかーらー名前で呼んで?ここはプライベートなスペースだよ。君は僕たちの息子なんだし」 「…だけど…仕事の話なので」 「…うん。決めたの?」 「はい。私は向こうに行って万里のサポートをします」 「…平気なの?」 「きっと辛いことのほうが多い。けれど…側で万里を支えていきたいのです」 少し前から何度も話を聞いていた。今のホテルが軌道に乗った今、それを次世代に任せて向こうで教育をしていきたいと… 「わかった。でも本当に苦しいときは一人で抱えないこと。約束できる?」 「はい。」 万里が記憶を失ったと聞き相当なショックを受けた千里くんは体を壊したことがある。そして、婚約の話を聞いた時の姿も見ていてこちらが苦しくなるほどだった。けど千里くんは僕たちを頼ってはくれなかった。それが少し寂しくもあり心配もしたのだ。 史澗くんとそういうところも似ていた。 それこら数日。史澗くんが調べた結果キャロルさんには他にも複数の男がいることがわかった。わかったのは千里くんが向こうに飛び立ってしばらくたった後だった。 キャロルさんの相手に共通するのは容姿も整っていてお金持ちの人ってこと 「…それと垓くん」 「ん。」 「多分だけどそろそろ万里くんキャロルさんと別れると思う。それと…万里くんは千里に惹かれているようだよ」 「え?」 「これまでは休みの日は必ず彼女に会っていたんだけど最近は千里とばかり一緒に過ごしているんだよ」 「じゃあ…」 「うん…そろそろ…報告が届くはずだよ。」 そんな話をしていたら電話が鳴った。相手は万里だった。 「もしもし。久しぶり」 「うん。どうした?日取り決まったとか?」 「ううん。ちがうよ。キャロルに振られちゃった」 「えっ!!別れたの!?」 僕の声に史澗くんが目配せして頷いた。史澗くんの勘は今もよく当たるのだ。

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