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 午後6時半、早めの行動がモットーの珠一は駅前の喫煙所で一服をしていた。すると続々タクシーや乗用車が乗降エリアに停車し、見知った顔が降車した。各々家族に送ってもらったりしたらしい。  そして水色の軽自動車からは、軽自動車に似付かわしくない長身の男が助手席から降りて来た。 「泰示!アンタおだたっち呑まんごつせなばい!」 「わかっちょーっちゃ…あ!珠っちゃんおったー!」  珠一は盛大に「チッ」と舌打ちをして煙草を一気に吸い、殻を灰皿に捨てる。煙草に火をつけたばかりの上司が「勿体ねぇ」と揶揄うと不機嫌に喫煙所から外れた。 「珠っちゃん私服えらしいやん!」 「は?(なん)が?」  グレーのVネックのシャギーニットに黒のPコート、脚の細さが際立つスキニージーンズと至って28歳男性相応のファッションで「可愛い」などと言われることが珠一にとって不服だった。  珠一を褒める泰示は折角の180cmモデル体型を全く活かせてない上下ともダボダボな若者ファッションで、珠一は呆れの声を出した。 「お前は何もせんでん女がくるきいいよな」 「そげんこつねぇし。つーか俺は珠っちゃんが好いとーもん」 「キモい、死ね」 「そげぇ照れんでよかろーもん♪」  飛びついてくる泰示を珠一は腹パン一撃で黙らせた。その場で(うずくま)る泰示にパートのおばちゃん達が「どんまい」と励ます。 「時間やき店ん入ろうやー」  1人の上司がそう言うと、その場にいた全員が返事をして忘年会の会場となるお店があるビルに入った。

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