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 ローテーブルに簡単な肴の皿と焼酎水割りセット、カルーアミルクセットを並べて、珠一と泰示はソファに腰を落ち着けた。 「乾杯♪」 「はぁ…」  すっかり疲れ切った珠一の体に麦焼酎の水割りが体内に染みる。 「珠っちゃんチ、えらい綺麗にしちょーね」 「当たり前やろ」 「高校ん時もロッカーとか綺麗やったもんね」 「お前はごん(ばこ)やったな」 「今もお袋に怒られる。部屋片付けぇっち」 「あんさぁ…もう28やろ?金もそげー使っちょらんのやら1人でアパートでん借りち自立しろっちゃ。実家やと彼女できてん不便やろ、こん辺ラブホとかも無ぇっちゃき」  成年独身男性として至極普通な話題を切り出すと、珠一は煙草を取り出して火をつける。非喫煙者の泰示に向けないように気を使いながら焼酎を飲みつつ吸う。グラスを置くと、氷のカランッとぶつかる音がする。  そんな音が聞こえるということは、無言の証拠。いつも(うるさ)い泰示が無言など有り得ないと思い珠一は泰示の方を見た。ギョッとする。 「井上?何、か…顔がえじぃばい」 「珠っちゃんは、こん家に女ん子連れてたん?」 「あ?まー…デリバリーなら何遍(なんべん)か…元カノは引っ越す前に別れちょるしなー…って何で俺がお前にこげんこつ言わな…井上?」  とうとう顔を下に向けた泰示が流石に心配になった珠一は灰皿に煙草を押し付け下から顔を覗き込んだ。 「井上、もう(ねみ)ぃと?」  寝落ちたのかと、泰示の顔にそっと手を伸ばすと、珠一の景色は一瞬で変わった。  白い天井と(しか)め面の泰示。 「そげん女ん子がいいと?」  泰示との付き合いはもう10年以上、なのに初めて聞く泰示の声色に珠一は竦んだ。 「井上…な、に…」 「さっきも、こげん嫁がいいとかこげん結婚してぇとか、んそげんこつ聞くん嫌やった!」 「はぁ?意味わからんし…お前は只ん腐れ縁で…同僚で、俺がどげん女と結婚してぇげな関係なかろぉ……っ⁉︎」 (バリ意味不明、やし……何、これ……キス…されちょる…誰に?井上⁉︎)  ギシッ、とソファの軋む音。指を絡め取られて一切動けない。口内はヌルヌルと蹂躙される、ディープキスだと理解した。

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