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第3話

確か昨日は昔の夢を見た。 昔と言っても俺がまだ中学生の時の話。 夢の内容はあんまり覚えてないけれど、朝起きた時にひどい喪失感に襲われた。 あ、俺今すっごい呑気に話してるけど人災最大の危機に見舞われてるんだ。 現在進行形で俺の前に君臨するのは不思議なぐらいキレイな金色をした髪の持ち主で。けど、微かにてっぺんが黒いから染めているんだとは思う。 いや染めてるとか地毛とか今はどうでもいい。 聞いてくれ、俺の不運な物語を。 始まりはそう、数十分前に遡る… ────────・・・ 「は〜…集会とかかったりぃ…」 「ほんとにな」 おっと、自己紹介がまだだったな。 俺の名前は佐藤 亜幸(サトウ アユキ)。 西熊高等学校,2-2 出席番号16番。 身長は167cmの体重55kg。 趣味は掃除と洗濯。 見てわかる通り、少し家事に特化した平々凡々な男子高校生。 そして隣でだるい、かったるいとずっと呟いているのが俺の友達の、 塩崎 律(シオザキ リツ)。 同じく西熊高等学校,2-2 出席番号17番。身長は170前半ぐらいなんだと思う。体重は聞いたことない。 中学校から剣道をやっているらしく毎日剣道三昧だ。 見た目は爽やかなスポーツボーイ。 認めたくはないが、イケメンだ。 チッ… ちなみにあだ名はソルト。 塩崎だからね。 俺はソルトにシュガーって呼ばれてる。 佐藤だからね。 「シュガー前進んでる」 「あ、わりぃ」 ボーッと自己紹介なんてしてたら列が進んでいた。あぶねえ、取り残されるところだった。 体育館にいくと2年生が全員集まっていた。西熊高等学校、通称西高はかなりのマンモス校で2年生だけで400人いる。 まぁ、それなりに体育館は広いのだが、残念なことに西高は全寮制男子高校だ。 男400人がひとつの空間に集められたらどんだけ体育館が広くてもむさくるしくなるのは当然だろう。 ソルトも俺もそれが嫌で集会はそんなに好きじゃない。 救いがあるとしたら、ルールがそんなに厳しくなく、話をしっかりと聞けるなら誰とでもどこにでも座っていいというところだろうか。 俺達はいつも体育館のいちばん入口に近い端っこでのんびり話を聞いている。 入口に近いから比較的空気も綺麗だしね。 「えー、これから学年集会を始めます。 司会は第2学年寮長の前島が務めさせていただきます。」 言い忘れていたけどこの学校はカースト制度が導入されている。 寮長になれるのは学年にたった一人で、学年首席だけがなれると言われている。 そして、学年成績が3位以内のやつはかなりの特別扱いをされる。 詳しくは知らないがひとつ、有名なのが寮の部屋だ。 学年3位以内、いわゆるカースト上位者は、高層マンションのような部屋を受け渡される(あくまで噂だが) それに加えて1人部屋らしい。 俺は1人で生活するとか考えらんないから1人部屋の良さがわかんないんだけど、みんな憧れている。 カースト上位者は1人部屋なため、 余りが数人出るがそいつらは普通の寮で1人生活か余り組で集まって住むと聞いたことがある。 ちょっとよくわかんないよね。 俺も全然わかってないよ。 ちなみに、カースト制度はただただ成績を見るだけで、日頃の行いなどは全く加算されない。 成績で全てが左右されるという事だ。 どれだけ悪いことをしてても、不良でも、セレブでも、有名人の子供でも… この学校を前にしてはなんの効果も果たさない。 けれど、それでも、西高入学志望者は後を絶たないのだ。 俺が入学した時、倍率は1.4だった。 約240人が落ちたことになる。 そんな学校に入れた俺は多分幸運の持ち主なんだと思う。 もっとも、俺は推薦で入ったから勉強どうこうって話じゃないけどね…

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