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第9話
「まずですが、本題に入る前にカースト制度についてお二人はどの程度ご存知ですか?」
「それなりには分かっているつもりです」
俺の言葉にソルトも頷いた。
「了解しました。カースト制度についての説明は省かせてもらいますね。
本題なんですが、佐藤さんと塩崎さんの立場についてです。」
「俺らの立場っすか??」
「はい、今佐藤さんと塩崎さんはご自分の立場がどのようになっていると思いますか?」
「「カースト下位の平凡な一般人。」」
「…残念ですが、ハズレです。」
どこがどうハズレなんだ?
上位者になったはずもなけりゃ、なんか特別なことをしたわけでもない。
「と、言いますと?」
「まず、どうして貴方がたがこのフロアに入れたと思いますか?」
このフロア、カースト上位者しか入れないフロア…
それは、ムギさんの言った通りムギさんが一緒にいて、ムギさんに招待(?)をされたからじゃないのか?
「ムギさんが一緒にいたからじゃ、ないんですか…?」
「俺もそう思います。ハクさん同行だったからとかじゃないんすか?」
「それもハズレです。
西高の決まりとしてどれだけ上位者のお気に入りでも、どれだけお家柄が良くても上位者しか入れないフロアには入ってはいけない
と言うルールがあります。まぁ、そのルールを完全無視する輩もいらっしゃるんですがね。」
「じゃあ、どうして俺らはここに入れたんですか?」
「そこなんです、私が話したかったのは。上位者と同部屋、これってかなりやばいことでして…」
あの寮長からやばいという言葉が出たのがミスマッチすぎて俺は少し笑いそうになったが我慢した。
この空気感で言うことではないかもしれないけど仕方ない。
だって、言ってみれば炭酸ジュースとご飯を一緒に飲み食いするってことだよ?
ミスマッチにも程がありんす。
「佐藤さん、真面目に聞いてくださいね。貴方の今後に繋がることなんですから」
「ひゃい…」
キランと寮長の目が俺を見る。
全くと言っていいほど抜かりがないね。
お見逸れ致しました。
寮長はわざとらしく咳払いをして数秒間をあけてから言葉を続けた。
「『カースト上位者と同部屋の者にはそれ相応の対応をするべし』」
「「へっ?」」
一瞬思考停止してから最初に口を開いのは俺だった。
「それ」
「相応の」
「対応を」
「する」
「「べし???!」」
「それ相応=カースト上位者と同じように対応する、ということです」
「ひぇっ…」
「わかります。大いにわかります、その信じ難い気持ち。ですが事実に変わりはありません。」
目を伏せ、やれやれと言った感じ頭を振った。この人もこの人で苦労してるんだな…
「ってことは今俺達はカースト上位者みたいな感じなんですか?」
「えぇ、このフロアも麦野さんや葉栗さんがいなくとも顔パスで入れますし、注文だっていくらでもして頂いて結構です。もちろんお金の問題はありません」
「それってアリなんすか?」
「まぁ、規定ですので…
私自身もアリだと思ってますし。
ですが、あくまでも麦野さんと葉栗さんに守られているということを覚えておいてくださいね。」
「俺達が守られている?」
「貴方がたをよく思っていない輩が存在するということです。あまり1人になるのはオススメしませんよ。」
「…よく分からないけど心得ておきます?」
「どうして疑問形なんですか…」
いやだって、自分でもよくわかってないんですもの…
俺今結構やばいよね。うんやばいわ。
こえーよ。なんだよ、よく思っていない輩って…1度に入ってくる情報の量がエグすぎてもう何が何だかわからなくなった。
えーっと、とりあえず?俺は、麦野さんからできるだけ離れない。って事だよね。うん。頑張る。
「まぁ、いいでしょう。くれぐれも…!一人行動だけはしないように…!!」
「「は、はい…」」
「それでは、私はもう行きますね。おやすみなさい」
「「お、おやすみなさい」」
寮長はムギさんとハクさんに声をかけてからどこかに向かって歩いていった。
何を言ってるのかは声が小さくて聞こえなかった。
っていうか寮長が歩いっていった方向は確かそっちは3年生の寮だったはずだけど…
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