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第12話
朝、起きたら俺は誰かに頭を撫でられていた。
その誰か、というのは一人しかいないわけだけど…
ムギさんの顔を見る前に頭の中で状況を整理してみたが、やっぱり理解出来なくてムギさん本人に聞けばいいという結論にたどり着いた。
俺って頭いいね!
「ムギさん…」
「ん、はよ」
パチッと目が合ったムギさんは寝起き特有の掠れた声がエロすぎて鼻血でそうになった。
思わず鼻の下確認したわ。
「おはようございます…
あの、なんで俺ここに居るんですか…」
「リビングで寝てたから持ってきた。」
「もっ…てき、た…」
「お前の部屋わざわざ行くのめんどくせーし、あのベッドあんまり良い奴じゃねーし」
「えっ…と、ありがとうございます??」
「ん、気にすんな」
なんか空気が甘い…
寝起きは眠くて甘くなる人なのかな?
はぁ…イケメンはどんな時でもイケメンなんだな…!辛いよ!そろそろ辛い!
「朝、食べれるか?」
「あー…すみません…俺朝あんまり食べない派です」
「だよな、でもちょっとは食えよ」
「??わかりました…?」
だよな?なんでだよな?
俺が不思議そうな顔をしてたのかムギさんがフワッと笑って昨日の夜の様子見てたらわかる、って言われた。
えー…そんなことあるのか?
いや…あるのかもしれないけど…んー…腑に落ちんぞ。
「シュガー、飯食う前に顔洗ってこいよ。」
「りょーかいしましたあ…」
顔を洗って、ダラダラとスマホを触っていたらムギさんに呼ばれて席に着いてみれば…
もうそりゃ驚き桃の木山椒の木も馬鹿じゃないよ。
だって…!朝からこんな立派なフレンチが…!!!しかもこんな寮で!って思ったけどキッチンがものすっごい広かったのを思い出した俺は納得…
するわけもなく!!
え、この家お手伝いさんとか五つ星シェフとかいないよね?!
小人?あ、小人の仕業??なんだなんだぁ…そういうことか〜
「何が小人だ。俺が作ったんだよ」
「ひぇ…」
現実逃避しかけた俺の前に現れた現実は信じ難いことこの上ない。
だって!こんな!いかにも不良です!みたいな人が!繊細な料理を!作れるわけないだろう!
「イテッ…ちょ、なんでデコピンするんですか?!」
「顔がイラついた。何、嘘つくなよみたいな顔してんだよ。」
「いやでもだって…」
「でももだってもねーよ。全部俺の手作りだバカ。」
「バカじゃないです!アホなんです!」
「一緒の意味だよバカ。てか、俺お前の分フレンチトーストだけしか作ってねぇけど足りるか?」
「あ、全然足ります!ありがとうございます!」
「ん、そのかわり今日の放課後ちょっと付き合え。」
「いいですけど、何するんですか?」
「買い物。家に食材一人分しかないから買いに行かねーと今晩も食堂になる」
「え、俺は食堂でも大丈夫ですよ?」
「俺が嫌なんだよ、あんな安っぽい味…」
まぁ、ムギさんが食堂のご飯を安っぽいというのも無理はない。
毎日これを食べてるんだもんな。贅沢だなぁ、って自分で作ってるから贅沢もクソもないのか?んん?
「ほら、食うぞ」
「あ、はい…」
「「いただきます」」
ムギさんは金髪にたくさんピアスがついているし、制服の時はネクタイつけてないし、かなりの問題児だと思うんだけど、作法っていうの?
なんか礼儀だけは凄いしっかりしてて、今みたいにいただきますとごちそうさまは絶対言うし、お箸の持ち方は綺麗だし、食べ方も綺麗だし、やっぱお家柄?そういう家なのかな?
んー…謎いね
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