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第4話

「なんだよこっちも忙しいんだよ! 手短に言ってくれ!」 「手短にな、分かった。志童がそっちに向かっとる」 「……はァア!!?」 「わしも年を取った、あの犬神は手に負えん。お前に任せた!」 「ちょ、待ってくれ! おい!?」 慌ててスマホを引き寄せた時には、もう通話は切れていた。 「志童が来る? マジで!? いつ? どこに!?」 そっちに気を取られているうちに、狸の妖気が押してくる。 「くそっ! ああ、もう!!」 敵の妖気に呑まれそうになり、俺は後ろの木陰に退避した。 『マジ! 頼む! から! いい子に! 寝て! くれ! 早く! 帰り! たい!』 木陰で印を結び、正式な九文字でなく自分の思いを唱える。 「フリーランスは残業代とか出ないんだよっ!」 再び繰り出す俺の霊気に、化け狸の姿が怯むように揺らいだ。 そしてぶつかり合う力の風が消し飛んだあと、そこにはもうヤツの気配はなかった。 (やったのか!? いや、逃がしたな。たぶん) これだけ心乱されていて、物の怪を鎮められるわけがない。 愕然としながら息を整えると、そこへ枯れ草を踏む足音が近づいてきて――。 「天心、天心、天心! いたっ、天心だー! 会いたかったー!!」 背後から巨大な犬――いや、4年ぶりの志童に抱きつかれた。

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