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第5話

「てんしーん!!」 常人には見えない尻尾を、志童は勢いよく振っている。 (狸は逃がすし犬は来るし、最悪だ……) 「落ち着け、っていうか重い、離れろ!」 背後から抱きしめてくる腕をすり抜け、俺は志童から距離を取った。 「どうして、俺がここにいるって……」 「近くまで来たら匂いで分かる。天心のお爺ちゃんから、だいたいの居場所は聞いてたし」 志童は自慢げに鼻を鳴らす。 コイツは犬神の影響で、昔から人並外れて耳と鼻がいい。 (コイツを使えば、人捜し、ペット探しの案件はだいたい片づくんじゃないのか?) ふとそんなことを思って見上げたところで、俺は自分の首の角度が前と違うことに気づく。 「お前……しばらく見ない間にまたデカくなった?」 「うん、1年で1センチ伸びてる」 「ハタチ過ぎても伸びるのかよ、育ちすぎだろ……」 俺もそこまでデカくなりたくはないが、頑張っても小柄な俺からしたら小憎らしい。 「天心は相変わらずちっちゃくてかわいいね」 「それ……次言ったら犬ごと封じるからな……」 「もしかして、今でも女の子に間違われてナンパされたりする?」 「その質問も、もっかい言ったら殺す!」 威嚇してもニコニコしているデカい男を見上げ、深いため息が漏れた。

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