6 / 19
第6話
それから俺は依頼者である雑木林の持ち主に状況を報告し、志童を連れて近くの公園に移った。
「で、体ちょっと見せてみ?」
朽ちかけたベンチに座ると、街灯からのオレンジ色の光が俺たちを包み込む。
「爺さんが、熱があるとか言ってたけど……」
志童の首筋に触れると、そこはじんわり汗ばんでいて熱かった。
「んー、最近ずっとそう。いつも体が火照ってぼーっとしてる。お医者さんは原因不明だっていうけど、いつものアレだよね?」
物の怪に取り憑かれた人間は、それだけで体力と精神力を消耗する。
子供の頃から体の中に犬を飼っているコイツは、ときどき原因不明の熱に冒されては俺を頼ってきていた。
「だろうな、口開けてみろ」
短く言うと、志童は従順に従う。
彼の口の中に指を入れ、健康そうな白い奥歯をきゅっと押してみた。
体の芯になるべく近い場所に触れることで、体内にいる犬神の力を感じ取ることができる。
「確かに、だいぶ溜まってんな。中和しないと」
志童の額に手を当てて、自分の霊力を注ぐことで犬神の妖力を散らす。
4年も触れていなかった彼の額が、すっと手のひらになじむのを感じた。
(志童……)
彼は目を閉じ、俺に全てを委ねている。
(あの村には爺さんがいるとはいえ、長いこと放っておいて悪かった)
ともだちにシェアしよう!