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第7話

犬神の力を散らすと、志童の熱とやわらかな気配が俺の中に流れ込んできた。 どうしてか胸の奥がじんじんと痛くなる。 (あんなことがなければ、俺ももう少しお前の力になれたのに……) 息をつき手を離すと、目を開けた志童と視線が合った。 「どうだ、少しは楽になったか?」 「んー、たぶん。でも……」 「……?」 「今、この辺がきゅうって痛くなった」 志童は切なげにまつげを揺らし、胸の辺りを指で押す。 それは犬神の影響とは違うやつだ。 なぜなら俺も、同じ痛みを感じてるから……。 目線より高い位置にある志童の頭をグリグリ撫でて、体を離す。 「そいつは問題ない。たぶん、すぐ収まる」 思春期特有の感情のもつれみたいなものなら、ほっといても時間が解決してくれるだろう。 でも分からない。俺たちはもう22だし、関係性が人とは少し違うから。 そんなことを思っていると、志童が気を取り直したように笑顔を作った。 「ところでさ、なんで天心は帰ってこないの? 学校卒業したら、あの家に戻ってくるもんだと思ってたのに」 「えっ!? それはだな……」 さすがに「お前がいるからだ」とは言いにくい。 が、もちろん理由はそれだけじゃない。 「田舎じゃ拝み屋の仕事を頼まれても、報酬が芋とか蜜柑とかだからな。そんなんじゃ食ってけねえ」 「その芋とか蜜柑とかを食えばいいじゃん!」 「いやだよ、うちも農家だし!」 実際のところ拝み屋はうちの裏家業で、主な収入源は親父たちがやっている農業だ。 ところが長い不景気でそっちの仕事もパッとせず、俺は田舎での未来をとっくの昔に諦めていた。

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