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第9話

(志童……) 事務所兼自宅のリビングで朝のコーヒーを入れながら、昨夜の再会を思い出す。 体のことも心配だし、もう少し優しくしてやってもよかった気がした。 (そういえば結構遅い時間だったけど、アイツちゃんと帰れたのか?) もやもやしてても仕方ない。 コーヒーメーカーがコーヒーを落としきるまでに、ゴミを捨てにいこうと勝手口を開けた。 その時――。 「……うわっ!!?」 そこにうずくまる大型犬……もとい志童を見つけ、変な声が出てしまった。 「な、な、な! なんでいるんだよ! こんなところに!」 「ふわ……おはよ、天心」 花壇の脇に座っていた志童が体を起こし、気持ち良さそうに伸びをする。 「名刺見て夜中にここにたどり着いたんだけど、天心、寝てるみたいだったから。朝になるのを待ってたら、俺も眠くなっちゃった」 「だからさー、電話しろって言っただろ!」 「でも電話したら天心、絶対帰れって言ったでしょ。俺は帰りたくなかった。せっかく4年ぶりに会えたのに、あれだけじゃ足りない」 (あれって?) 首を傾げていると右手を引き寄せられ、顔のところに持っていかれた。 「あのな、あれはそういうんじゃない。純粋に犬を鎮めるためであって、スキンシップとかじゃないから」 「分かってる、でももっとしてほしい」 俺はため息をつき、周りの景色に目を向ける。 朝方の今、近くに人の気配はないけれど、もう少ししたら人通りも増えてここは目立つ。 「とりあえず入れ」 しぶしぶ志童を、事務所兼自宅マンションに招き入れた。

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