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第10話

ゴミを出して戻ると、入り口のドアを閉めたところでいきなり志童に抱きつかれる。 「天心の匂い」 髪をすくい上げ、耳の後ろに鼻先を押しつけられた。 「やめろヘンタイ……んっ!」 背中に張り付く大型犬を押しのけようとしたのに、振り返った途端に正面から抱きしめられる。 (もしかして、昨日のあれが効いてないのか!?) 志童は俺をガッチリとホールドしながら、当たり前のように尻尾をぶんぶん振っている。 “あれだけじゃ足りない”というコイツの言葉は、案外本当だったらしい。 (爺さんも“犬神の力が強まってる”って言ってたしな。これは対処が必要か) 「志童、1回落ち着こうか。息吸って、吐いて……」 俺は自分の焦りを静めながら、腕の中から彼を見上げる。 ところが目が合った途端、とろけるような笑顔でささやかれた。 「キスしていい? 天心」 「おまっ、こら、話聞け!」 「聞いてる、けど……抑えられない!」 首を傾けてきた志童を見て、とっさに顔を背ける。 すると首筋に、いきなり歯を立てられた。

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