10 / 19
第10話
ゴミを出して戻ると、入り口のドアを閉めたところでいきなり志童に抱きつかれる。
「天心の匂い」
髪をすくい上げ、耳の後ろに鼻先を押しつけられた。
「やめろヘンタイ……んっ!」
背中に張り付く大型犬を押しのけようとしたのに、振り返った途端に正面から抱きしめられる。
(もしかして、昨日のあれが効いてないのか!?)
志童は俺をガッチリとホールドしながら、当たり前のように尻尾をぶんぶん振っている。
“あれだけじゃ足りない”というコイツの言葉は、案外本当だったらしい。
(爺さんも“犬神の力が強まってる”って言ってたしな。これは対処が必要か)
「志童、1回落ち着こうか。息吸って、吐いて……」
俺は自分の焦りを静めながら、腕の中から彼を見上げる。
ところが目が合った途端、とろけるような笑顔でささやかれた。
「キスしていい? 天心」
「おまっ、こら、話聞け!」
「聞いてる、けど……抑えられない!」
首を傾けてきた志童を見て、とっさに顔を背ける。
すると首筋に、いきなり歯を立てられた。
ともだちにシェアしよう!