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第12話

1週間後――。 「依頼の猫、捕まえてきたよー!」 志童が猫入りのバスケットを抱え、事務所に戻ってきた。 「そいつやっぱ生きてたのか。霊視で見つからないわけだ」 失せ物探しもウチの取り扱い業務だが、霊視で探り当てる俺よりも、匂いで探せるコイツの方が向いているみたいだ。 当然死んだペットなら、こっちの分野なんだが……。 ちょっと複雑な心境になっていると、志童が尻尾を振りながら俺のデスクに近づいてくる。 「ねえねえ天心、褒めてよ!」 「尻尾出すなって」 「勝手に出ちゃうんだもん」 バスケットの中の猫がぎょっとした顔で志童を見ていた。 「仕方ねーな」 デスクの脇にひざを突く志童の額に、手のひらで俺の霊力を送り込む。 そうやって犬を鎮めるついでに、頭をさっと撫でてやった。 「しかし、いつまでもお前をここに置いとくわけにはいかねーよな……」 あれから日に1回のペースで志童の犬を鎮めているが、コイツにも学校がある。 そろそろ田舎に返さなきゃいけない。 「俺はずっと天心のそばにいたいのに」 「ちゃんと勉強して単位取って、来年こそ卒業しなきゃマズいだろ」 「それはそうだけど……」 「問題はお前の犬、だよな」 志童も頷く。 調べたところ、寄生先である人間の成長につれて、憑いている物の怪の力が増すことはままあるらしい。 そしてハタチ過ぎてもめきめきと成長している志童のことだ。 このままだと犬神の力が、俺の霊力では押さえ込めなくなってしまうかもしれない。 志童がずっとここにいられないという事情は差し置いても、何らかの対処は必要だった。 「本格的に除霊するしかないな……」 「えっ、そんなことできるの?」 志童が目を見開いて俺を見た。 「ああ。ちょっとした荒技でお前の体にも負担がかかるが、犬を追い払えそうな方法があるにはある」 そして……。

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