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第15話
駆けつけると雑木林の上空に、妖気の渦が立ちのぼっていた。
(あの狸、前より育ってやがる!)
普段、物の怪は霊感のある人間にしか見えないが、ここまで育つと常人の目にも見えてしまう。
すでに雑木林に続く道に、人だかりができていた。
(早く片づけないと)
俺は妖気の渦の根元に向かって、林の中を駆けていく。
そしてたどり着いた場所にいたのは、雲をつかむような大狸だった。
このサイズにまでなってしまうと、九文印の力で消し飛ばすのは難しい。
もともと封印されていた祠まで誘導し、そこに封じ込めるのが現実的なように思えた。
「おい、こっちだ!」
自分がおとりになるべく、近づいていって大狸の注意を引く。
ヤツは俺のことを覚えていたのか、こちらに向かってまっすぐに突進してきた。
「よし、来い!」
吹き付ける妖気に足下をすくわれそうになりながらも、俺は雑木林の中を走っていく。
ところが祠の入り口は、大きな石で塞がれていた。
「嘘だろ!? くそっ、先に確認しとくんだった!」
子供でも入り込んだら困るからと、ここの持ち主が石で塞いだに違いない。
よくあることだ。けど、今はマジで勘弁してほしい。
案の定石をどけようとするうちに、俺は後ろから吹き付ける狸の妖気に捕まってしまった。
(マズい!)
金縛りにあったように体が硬直し、印を結ぼうとする手が動かない。
全身から冷や汗が吹き出す中、意識が朦朧とし……。
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