15 / 19

第15話

駆けつけると雑木林の上空に、妖気の渦が立ちのぼっていた。 (あの狸、前より育ってやがる!) 普段、物の怪は霊感のある人間にしか見えないが、ここまで育つと常人の目にも見えてしまう。 すでに雑木林に続く道に、人だかりができていた。 (早く片づけないと) 俺は妖気の渦の根元に向かって、林の中を駆けていく。 そしてたどり着いた場所にいたのは、雲をつかむような大狸だった。 このサイズにまでなってしまうと、九文印の力で消し飛ばすのは難しい。 もともと封印されていた祠まで誘導し、そこに封じ込めるのが現実的なように思えた。 「おい、こっちだ!」 自分がおとりになるべく、近づいていって大狸の注意を引く。 ヤツは俺のことを覚えていたのか、こちらに向かってまっすぐに突進してきた。 「よし、来い!」 吹き付ける妖気に足下をすくわれそうになりながらも、俺は雑木林の中を走っていく。 ところが祠の入り口は、大きな石で塞がれていた。 「嘘だろ!? くそっ、先に確認しとくんだった!」 子供でも入り込んだら困るからと、ここの持ち主が石で塞いだに違いない。 よくあることだ。けど、今はマジで勘弁してほしい。 案の定石をどけようとするうちに、俺は後ろから吹き付ける狸の妖気に捕まってしまった。 (マズい!) 金縛りにあったように体が硬直し、印を結ぼうとする手が動かない。 全身から冷や汗が吹き出す中、意識が朦朧とし……。

ともだちにシェアしよう!