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第17話

「天心……」 耳元でささやく優しい声に、俺はゆっくりと意識を浮上させる。 まぶたを持ち上げると、志童が俺の顔を覗き込んでいた。 「よかった、なんともない?」 「ああ、けどここは……」 聞いてからすぐに気づく。どう見てもここは自分のベッドだ。 「そっか、志童が運んでくれたのか。そうだ、狸は?」 途切れる意識の中で見ていたんだろう。 巨大な狸を喰らう、さらに巨大な犬の姿が記憶の中から呼び覚まされた。 「そうだった、お前があれを……」 「俺っていうか、俺の中の犬だけどね。でもなんか、俺も戦った感じはした」 それはそうだろう。犬神の封印を解いて俺を守ろうとしたのは、紛れもなくコイツ自身だ。 (志童が俺を守ってくれた……) 俺は目の覚める思いで、そばにいる男を見る。 俺の方がコイツの保護者のつもりだったのに。ちょっと、惚れ直してしまった。 「けどお前、怖くないのか? 自分の中の犬神が」 志童は犬を追い出すことを諦め、自から封印を解いてほしいと言ったのだ。 俺の問いに、彼は少しの間考え込むような顔になる。 「それは、意味分かんないし怖いよ。でも、天心を守れるならって」 「俺を守れるなら……」 その答えに驚きながら、志童の頬に触れる。 するとその顔が近づいてきて、俺の唇にキスをした。

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