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合い鍵

 気がつくと、駅前だった。電車が着いたばかりなのか、改札に向かう階段から、大量の人が吐き出されてくる。設楽は頭をぶんぶんと振って、頭の中から先ほど見た風景を追い出そうとした。  どういうことだろう。どういうことだろう。  ひどく興奮して、心臓がバクバク言っている。  荒い息をついて額の汗を拭おうとした時、手の中にまだ化学室の鍵を握っていることに気がついた。 「やべ、返しに行かなきゃ……」  手の中の鍵を見つめる。  放課後、誰もいなくなった北棟の3階で、高柳は毎日のように山中にセクハラをしているのだろうか……。  ドアに背中を向けている山中がどんな顔をしていたのか、設楽には分からなかった。  ……嫌がっていたに決まっている。ぶっ殺すとか言ってたし。  でも。  でも、もしかしたら……。  設楽は、手の中の鍵をぎゅっと握りしめて、駅前の大型スーパーに入っていった。  合い鍵は、20分もあればできるはずだ……。

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