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夜の北棟

 5時間目の古文は頭に入ってこなかった。  落ち着いて考えると、高柳は自分を牽制したのだとしか思えない。高柳は自分があの場にいたことに気づいているのではないか。そして、口外するなと、もう2度と覗くなと、釘を刺したのではないだろうか。  そんな訳にはいかねぇよ、高柳。あんたばっかり先生にいたずらして良いなんて、そんな訳ないんだからさ。  放課後化学部に顔を出し、1ヶ月後に迫った文化祭の打ち合わせをして、その後みんなでお菓子を食べながら無駄話をして、6時に下校放送が鳴ったらそのままいつもの流れで駅前のマックへ。そこで小腹を満たして、6時半に解散。設楽は本屋に寄るからとみんなと別れ、そのまま学校に戻ってきた。  北棟と中央棟の間の中庭から、3階の電気を確認する。化学準備室の電気は思った通り消えていて、美術準備室の電気は点いている。人影が2つ、窓にぼうっと映っていた。  設楽は化学準備室と美術室の間の階段を登って、作った合い鍵で化学室に入った。電気を点けては忍び込んだことがばれるから、暗がりの中携帯を取り出し、ディスプレイの光に頬を照らしながら、適当に時間を潰す。  7時。  携帯をしまい、そっと化学室に鍵をかける。  美術準備室のドアは今日もわずかに開いている。  心臓が、バクバクと鳴っていた。
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