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夜の美術準備室

「高柳っ!お前最近なんなんだよ!」 「何が?」 「何がって……!ガキじゃないんだから、そんなにサカるな……!」 「プレイだよ、プレイ。せっかく先生になったんだから、校内エッチはお約束だろ」 「ふざけ……んっ!お前、そのうち見つかってクビになるぞ!」  設楽はごくりと唾を飲み込んだ。高柳の『いたずら』は、どんどんエスカレートしている気がする。  今日の高柳はいつもの右隣ではなく、山中の後ろに立っていた。設楽からは高柳が邪魔で山中の姿は見えないが、がっちりと抱き込んで、抵抗を奪っているのは分かる。衣擦れの音。こらえきれない喘ぎ声。何をしているのか明白だ。  ヤメロよ、先生嫌がってんじゃないか!  そう叫びたいのに、叫ぶどころか息を潜めてしまう。  目の前が赤くなるほど腹が立つのに、山中の声をもっと聞きたくて、動けなくなる。  高柳の肩を、山中の震える指が掴む。止めようとしてるのだろうか。でもそんなに色っぽく震えてたら、高柳だって止められる訳ないよ。俺だって、ヤメロって言う事もできないんだから……。 「山中先生、ゴム、つけたげようか」  高柳の掠れた声。普段聞く声よりも低くて甘い声に、山中の体が震えている。 「馬鹿、お前何する気だよ……っ!」 「色々汚すと面倒だろ?」 「んっ…お前マジでやめ……っ!」 「あ、でもその前に」  声に笑いを含ませて、高柳が後ろを振り向いた。 「設楽、入って来いよ」  ──── え? ────  今、高柳なんて言った……?  一瞬頭の中が真っ白になって、パニックになった。  ドアの向こうで、にやりと笑う高柳が、ゆっくり近づいてくるのが見える。 「た…か、やなぎ……?なに……?何言って……」  山中の、戸惑った声が聞こえる。  逃げなきゃ。  早く、ここから逃げなきゃ……。  設楽は必死に立ち上がろうとしたが、端から見ると全く微動もせず、ゆっくりと開く扉をただ見ているようにしか見えなかった。  灯りを背にして立つ高柳の顔は、陰になって設楽からは見えない。でも、どんな顔をしているのかは分かるような気がした。  きっと、笑っているに違いない。  どこか昏い、貼り付いたような笑いを……。  目の前の扉が、とうとう開いた。時間にすれば1秒もかかっていないのだろうが、それは永遠のように長く感じた。  腰が抜けたようにしゃがみ込んだ設楽の前に高柳の腕がそっと伸びてきて、設楽の腕を掴む。 「見~つけた。ほら、こっち来いよ」 「たか……」  喉が渇く。舌がヒリヒリする。高柳は口元の笑みを納めることなく、ものすごい力で設楽を準備室の中に引きずり込んだ。
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