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高柳ー1

「飯、どこで喰う?ファミレス?それか弁当買ってうちで喰う?出前取っても良いけど。あ、タバコ吸っても良い?」  返事も聞かずに、高柳は窓を大きく開けてタバコに火をつけた。まだ十月も半ばを過ぎれば、夜はさすがに寒い。冷たい風に、設楽は思わず背筋をふるわせた。 「出前にする?俺たち3人でファミレス入ったら、どんなご関係ですかって感じだし。設楽が補導されてるように見えても困るしなぁ」  一般教科担当の高柳はスーツだが、芸術専科の山中はいつも普段着で学校に来ていた。今日も長Tとデニムの上に一応ジャケットを引っかけただけという出で立ちで、大学生に見えないこともない。もちろん、設楽は制服だ。 「補導された生徒がなんでファミレスで補導した教師と飯喰うんだよ。普通に年の離れた弟とか思うだろ」  楽しそうな高柳に、山中が忌々しげに吐き出す。だが高柳は山中の棘に気づいていないように、ツラツラと1人でまだ喋っている。 「なんで設楽補導されたんだろう……。つうかユキは何役?お前も補導する側には見えないよな。その格好フリーターっぽいし。あ、俺はスーツだから先生役ね」 「うるせぇよ。どうせフリーターだよ。つうか、設楽に失礼なこと言うな。それにお前先生役じゃなくて、ほんまもんの先生だろ」 「そういうプレイも良くない?」 「なんだよそのプレイって!幼稚園児のごっこ遊びか?」 「もうちょっとアダルトなごっこ遊びで」 「お前の頭はそればっかりかよ!」  いつまでもバカ話ばかりしている大人2人に、設楽は恐る恐る声をかけた。さっきから、訊きたいことが山ほどあるのだ。 「あの、先生……」 「ん?」  設楽が「先生」と呼ぶのは山中だと分かっているのに、高柳が返事を寄越す。ずっとヘラヘラしてる高柳に、設楽はイラっとした。 「いや、高柳じゃねぇし……」 「なに?エロ関係の話は、ユキ答えねぇよ?俺なら何でも答えてやるから、訊けば?」 「高柳!」  本当に何でも話しそうな高柳を、焦って山中が睨みつける。高柳はタバコの煙を窓の外に吐き出してから、左手で山中の頭を軽く撫でた。「やめろよ」と小さく呟く山中に苦笑しながら、高柳はもう1口煙を大きく吐き出すと、吸いかけのタバコを灰皿にねじ込んだ。止めて欲しいのは、頭を撫でることではなくて、色々ばらされることだろうか。  だが。 「俺とユキは中学からの付き合いで、最初に告ったっていうか、押し倒してきたのはユキの方。俺も隙をついて襲おうと思ってたところだったのに勝手に乗っかられて。まぁすぐに襲い返したけどね。その後大学ぐらいまではお互いの覇権をかけて、上になったり下になったりだったよな?で、体の相性的に、今はこいつがネコに落ち着いてるんだけど。あ、ネコって分かる?女役ってことね。そんでタチが男役。今一緒に働いてるのは、元々俺が新卒で藤光に採用されて。2年目にたまたま美術教師に欠員が出たから、笹原さんがこいつねじ込んでくれて。笹原先生、分かる?理事長の末っ子。笹原さんは学部違うけど大学の先輩で、サークル一緒で可愛がってもらって。まぁユキは美大だから大学も別だけど、俺を通して知り合って、3人でよくつるむようになってさ。ユキを藤光に入れちゃおうってのは笹原さんも最初から目論んでたみたいで、教免取っとけってユキにしつこく言ってて。だからまぁ、職場恋愛じゃなくて、恋愛を職場に持ち込んだっていうか、そんな感じ。あ、後これ大事!俺たち、普段は学校内であんまエロい事してないよ?お前が見てるの知ってたから、ちょっとからかおうかと思ったんだけど、思いの外お前がマジだったから、半分焼き餅で、半分プレイ?見られてると思うと燃えるなぁ」  そこまで一気に言うと、バックミラー越しに設楽を見た。目が、からかうように笑っている。  話の内容に、もう設楽はいっぱいいっぱいだ。  最初に押し倒したのは先生?  上とか下とか?  今は先生がネコ?  笹原先生?  つうか、中学生?  恋愛を職場に持ち込んだ……?  イヤ、中学生……?  ちゅ……イヤ、イヤ俺も初エッチは中学だったけど……。  でも……でも男同士で……?  山中先生が……?  先生が押し倒し……
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