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高柳ー2
「で、お前は?さっきの質問に答えてないよな?」
「さ、さっきの質問って……?」
いきなり声をかけられて、焦って設楽は声がひっくり返った。考えていた内容が内容なだけに、その焦り方もハンパではない。
中学からずっと付き合っていたのなら、人生の約半分、この2人は付き合っていたことになる……。俺なんかが入り込む隙間は1ミリだってないのだろう。
でも。
「さっき質問したじゃん。お前、ユキのこと、抱きたいの?抱かれたいの?」
「っ!俺は……!」
「言っとくけど、ユキの中に何か突っ込んで良いのは俺だけだよ?」
「たか…っ!」
真っ赤になって山中が叫ぶ。
突っ込むって、そんな直接的な……!
「ん?だってエッチするってそういうことじゃん?あ、ベロとかも突っ込ませねぇよ?ユキ、他人と濃いチュー禁止な」
「お前、何言ってんだよ!本当に黙ってくれ!ごめんな設楽、高柳、教師のくせして馬鹿だから……!」
「もちろんオモチャも禁止よ?」
「も……お前日本語通じねぇ……。どうやって今迄お前と話してたんだっけ?」
「体で?」
「マジで1度死んでくれ……!」
噛み合わない会話が続き、気づいたらもうマンションの地下駐車場だった。結構でかいマンションだ。設楽はびっくりして辺りを見回した。
「すげぇ、高そうなマンション……」
「こういうところに住めるように、お前も頑張りなさい」
「ローンでカツカツなくせに何威張ってんだよ」
高柳の部屋は8階で、生意気に角部屋だった。リビングも広いがベランダがでかい。いや、テラス?テラスって言うのか?テラスにガーデンテーブルのセットが置いてあって、何となくむかついた。
「何、あのテーブル」
「あそこでビール飲むんだよ。良いだろ?さ~て、何食べるかな。ピザと中華と……あ、ファミレスの宅配でも良いか。設楽何食べたい?」
口笛でも吹き出しそうな上機嫌さで、高柳が状差しのメニューを広げていく。他にも、寿司屋や宅配専門の釜飯屋など、ずいぶんたくさんメニューをため込んでいる。この様子だと、自炊はしないのだろうか。
あまりにもたくさんメニューがあるので、設楽は少し迷って、無難な選択をした。
「ラーメンで良いです」
「オッケー。ユキはかに玉丼と味噌ラーメンで良いか?」
返事も聞かずに電話をかけに行く高柳を見送って、山中がそっと設楽をつついた。
「お前、飯喰ったら隙見て逃げろ。あいつ絶対やばいこと考えてる。エントランス出て左に行ったらすぐ駅だから」
「先生は、高柳がやばいこと知ってて付き合ってるの……?」
「俺は……」
一瞬、山中が頬を赤くした。生徒相手に何を話してるんだという気持ちにでもなったのだろうか。
設楽が自分を好きだと言うことを、山中はきっと分かっていない。好きな人のそんな顔が相手にどんな感情を起こさせるのかということも。
「お、俺のことはどうでも良いだろ……」
耳まで赤くして、長い睫毛が震えている。声を潜めているために、自然と顔が近くなる。
さっき高柳が吸っていた煙草の匂いと、テレピン油や様々な絵の具の混ざった、美術室独特の匂い。それから、なにか甘い匂いが混じり合って、設楽の鼻をくすぐる。
先生の匂いだ……。
ドキドキしながら山中を見ていると、注文をし終えた高柳が戻ってきた。顔を寄せ合い、2人して顔を赤くしているのを見て、高柳の右眉が器用に上がる。
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