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祭りの後ー1
山中はぴくりともせずに眠っていた。
あの後山中は設楽の中で達かされ、その後設楽から引き離されると何度も高柳に挑まれた。声が枯れるほど啼かされて、最後には細く長く叫ぶように喘ぐと、ぐったりと動かなくなった。
その様子を、設楽はずっと見つめていた。
……すぐ、隣で。
山中が高柳に抱かれ、涎を垂らしてよがる姿を見るのは、目を覆い、耳を塞ぎたくなる程の拷問のようで、それでいて設楽は瞬きもせずに山中の姿を目に焼き付けていた。
高柳に犯される山中に、堪らない興奮を覚える。
俺の先生に触らないでくれと思う心で、もっといやらしい先生を見せてくれと切望する。
心が、バラバラになりそうだった。
多分山中は隣りに設楽がいたことさえ頭になかっただろう。それだけ高柳の攻めは激しく、山中が正気を保てているようには見えなかった。
いつも椅子に腰掛け、窓から差し込む光にきらきら光るガラスを透かしながら、作品を作っている真剣な山中からは、想像もつかないような姿。
学校の誰も、あの先生を知らない。
俺の他には、クラスの友達も、美術部の部員達も、他の先生達も、快楽に身を染めて体を震わせる先生を知らないのだ。
────ただ1人、高柳を除いて────
山中の穏やかな寝息を聞いていると、涙が出てきた。
幸せで悔しくて嬉しくて悲しくて、どうして良いのか分からなかった。
それからどれだけそうしていただろうか。
ベッドの上でぐいっと涙を拭うと、眠っているのかと思った高柳が声をかけてきた。
「目、醒めたか?」
「……俺、寝てた……?」
「まぁ、疲れてるだろうし。もう11時だ。送ってくけど体は大丈夫か?」
「……多分……」
高柳は上半身だけ起こして、山中を見下ろしていた。
愛おしむ目をして。
その目を見たら、設楽の胸がギリギリと痛んだ。
「まぁユキのことだから心配ないとは思うけど、ちょっと後ろ見せてみろ」
「え?」
一瞬何を言われたか分からなかったが、高柳は遠慮のない動作で設楽を俯せにし、尻に手をかけてきた。
「なっ!何してんだよ高柳!」
「じっとしてろ……あぁ、ちょっと腫れてるな……。怪我はしてないみたいだけど……ちょっと待て。今薬塗ってやるから」
「い、良いよ……!」
「明日体動かなくなるぞ。じっとしてろ」
山中の指よりももっと無骨な指が、ヌルヌルとした軟膏を纏って蕾に触れてくる。しかも、入り口だけではなく、内側にまで……。
「うぁっ!」
「ごめん、痛いか?」
「い、痛いに決まってんだろ!?」
「だよな。俺も昔ネコやってたけど、どうにも苦手でさ。あんまりきつくて死ぬかと思った」
手際よく処置をすると、「風呂は家で入った方が良いだろう?」と蒸しタオルを作ってくれて、一緒に新しい下着をまた一袋渡してくれた。意外とマメな高柳に、少しだけ意外な気がした。
「まだ電車あるから、1人で帰れる。高柳は先生についててやれよ」
「階段の登り降りきついぞ」
「でも先生まだ寝てるし」
「こいつは朝まで起きねぇよ」
さっさと身支度を済ませた高柳が、甲斐甲斐しく支度を手伝ってくれる。
正直、今あまり高柳の顔を見たくない。だが高柳が体を拭いてくれたり、服を取りに行ってくれたりするのがありがたいのもまた事実だ。なんとか帰り支度を済ませると、寝ている山中の頬にキスを落としてから「先生、帰るね。よく寝てね」と挨拶をして、高柳の家を後にした。
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