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再び保健室ー1

 ここまでOK?と、笹原が設楽を覗き込む。  あまりの話の内容に、設楽はどうして良いのか分からなくなった。何か無性に悔しくて堪らない。どうして先生がそんな目に遭わなくちゃいけなかったんだろう。どうして……? 「設楽君?」 「あ、ごめんなさい!」  慌てて涙を拭って、笹原に向き直る。笹原はそっとハンカチを寄越してきた。くそ、見られたか。恥ずかしい……。 「じゃ、じゃあどうして今は先生がネコで、あんな事になってるんですか?高柳は、すぐに襲い返したって言ってましたけど」 「いや、暫くの間はずっとユキがタチだったみたいだよ?でも……君さ後ろで感じる?」 「は?」  一瞬、何を言われたのか分からなかった。  後ろで、感じる……? 「だから、前立腺を刺激されて、ちゃんと後ろで達ける?」  かなりあけすけなことを言われて、即座に赤くなる。  な、何て事を訊くんだ……!初対面なのに……!  だが初対面の自分にそんなことを訊くなんて、さすがに何か理由があるのだろうと、設楽は怪訝に思いながらも素直に口を開いた。 「いや…あの、まだそこだけで達けるかって言われたら多分達けないですけど……。俺、山中先生が初めてだし、そんなに数もやってないんで……」 「あぁそうか。……でもどう?そのうち良くなりそう?」  笹原はひどく下世話な話をしているくせに、至って真面目な、ひどく清潔そうな顔をしていた。なんか、こんな顔でそんな事訊かれて、赤くなってる俺の方が変態みたいだ……。 「何でそんな事訊くんですか?」 「良くなりそう?」  こちらの質問を全く無視して畳みかけてくる笹原に、無駄な事はするまいと溜息をつく。所詮、こいつは高柳の友達なのだ。 「よく分かんないですよ。相手が山中先生だから感じてるだけかもしんないし」 「じゃあ達けなかった?」 「いや、それは…、前もいじられたし……」 「達けたんだ?最初から?」 「え…うん、それは……」  何でそんなに拘るのか。あまり人のセックスをあけすけに聞くモンじゃないだろうに……。  ふーんとしばらく考え込むと、笹原はぼそりとひどい事を呟いた。 「そうだよな。じゃあやっぱりユキのテクの方の問題じゃないんだよね、きっと……」 「え?何の話?」  ユキのテクの方の問題って……。そんな先生に失礼な事言わないでくれる!?  思いっきり胡乱(うろん)な目で睨んでやったら、笹原が心外だという顔をした。 「だから、何で今ユキがネコかって話だよ。高柳、全く後ろダメらしいよ?」 「は?だって、前立腺だってあるし……」  アレは思ってたより悦かった。あんな場所が男の体にあるって事は、神様は最初から男同士のセックスを想定していたとしか思えない。 「いや、前立腺って必ずしも中から弄って感じる訳じゃなくて、中には全然感じない人もいるんだよ?」 「嘘!」 「俺、医者なんですけど?まぁ、医者云々より、俺も元タチだから、経験上言うんだけどさ」  元タチ?え?それってどーゆう……?  思ってた事が顔に出たのか、笹原がにやりと笑った。 「あの2人がこんな話を俺にするんだよ?俺だってゲイに決まってんだろ。前はタチだったんだけど、俺の彼、元々ノーマルなもんだから、ネコにはすごい抵抗があるらしくて、まぁ、なし崩し的に俺も今ネコでさ。だからユキの気持ちは少し分かるよ。俺にもちんこ使わせろとか、時々思うからね。まぁ、俺はユキみたいにトラウマとか無いから今のままでも良いんだけどさ」 「ちんこ…」  綺麗な顔して、何言ってるんだこの人……。    いやいやいや、でもそれ大事だよね……。うん、俺も確かに、ちょっと思った。俺も、ちょっと先生に突っ込んでみたいとか思ったし。でも、今の話を聞いたら、そんな事はもう全く考えられなくなったけど……。  そんな風に先生に対して思っちゃいけないんだ。先生にこれ以上傷ついて欲しくない……。  俯いてしまった設楽をどう思ったのか、笹原は小さく溜息をつくと、構わず先を続ける。 「後ろ全く感じなくて、後ろ使ってセックスするのって、どの位大変か分かる?俺はがっつり感じるから、想像するしかないんだけど」 「……いや、それって……痛いばっかりって事……?」 「まぁそうなるよね」 「……えっ、それって……拷問……?」 「多分そんな感じだろうね……」  設楽は目を閉じて、最初に山中に抱かれた時の事を思い起こしてみた。  山中が高柳に自分と同じ事をされて感じていたから、山中が痛みで萎えた設楽に触れてくれたから、そして前立腺をこすられると、痛みと共に雷に打たれたような快楽が吹き出したから、だからあの痛みに耐えられたのだ。もちろん、山中が優しく根気強くほぐしてくれたからというのもある。  もし山中がそうしてくれなければ、怪我じゃ済まなかっただろう。女と違って、それほどの痛みとリスクの中でやっているのだ。

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