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3人の時間

 土曜日、いつも通り自宅から少し離れた公園脇に、高柳が車で迎えに来た。 「学祭挟んだから、ちょっと久しぶりだな。どう?どの位間隔開けるのが楽?毎週じゃ大変だろ?」  高柳が楽しそうに、そのくせ少しプレッシャーをかけて、設楽の顔色を窺ってくる。こいつは本当に、俺を利用しているくせに、俺に嫉妬してるってどういうことだ。 「俺は、毎週でも良いよ!」 「またまたぁ」  高柳が煙草を咥えながら、意地悪く笑った。 「お前、こないだっから俺らのこと、少し避けてるよな。何?笹山先生から何聞かされた?」 「俺が避けてんのは、あんただけだよ!笹山先生からは確かに色々聞いたけど、でもそれを聞いたからって、先生を嫌いになったりはしない」  きっぱりと言い切ると、高柳は面白くなさそうに溜息をついた。 「そりゃあ殊勝なことで……」  その後、言葉少なに車はマンションの駐車場に滑り込んだ。高柳の部屋に入ると、山中はもう先に来ていて、ダイニングテーブルに書類や図面を広げながら「いらっしゃい」と微笑んでくれる。  まるで、自分の部屋にいるように自然体だった。  テーブルに広げられた図面は、来年の2月に開かれるグループ展の、会場の見取り図らしい。今月中に配置の希望を提出しないといけないんだと、真剣な顔で図面を見つめている。 「俺んち、鋳物屋なんだよね。親兄弟どころか親戚もほとんど皆職人なんだ。でも俺は元々ガラスが好きで。それで、アイアンとガラスを組み合わせた作品を作ってるんだ」 「じゃああのでかい昆虫は、フレームが鋳物なの?」 「そう。あ、でも鉄の純度を落として、軽量化は図ってるけどね」 「そっかぁ、あれ、すごい綺麗だった!」  設楽が目をキラキラ輝かせてそう言うと、山中は嬉しそうに笑った。 「高柳はこのテの話が好きじゃないみたいでさ。俺の話なんて、いつも半分しか聞いてくれないんだ」  高柳への不満を遠慮無く口にする山中に、設楽は少しだけ複雑になる。本心からそれを不満に思っているのか、設楽に気を遣っているのかが分からない。  あぁ、自分は先生達と一緒にいると、どんどん卑屈になる。先生のことが好きなのに、先生のことを好きな自分を嫌いになりそうだ。  山中が自分を見つめている。高柳はソファの上でつまらなそうにテレビを見ていた。  設楽は高柳に見つからないように、山中の唇にキスをした。山中は驚いたように目を見開き、それからゆっくりと設楽にキスを返してくれる。ちゅっと微かな音を立てて唇が離れると、テレビを見ていると思った高柳がこちらを睨んでいた。 「何キスとかしてんだよ。俺も仲間に入れろよ」  怒っているようにも、おどけているようにも見える顔で高柳が詰め寄って、3人はそのままソファで体が溶けそうになるまでセックスをした。

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